平成26年度は、24年度と25年度の成果を利用して、性労働当事者と経営者をふくむ性産業関係者へのアウトリーチと聞き取り調査を、当事者協力者と共に行った。また、性産業ではたらく人びとの法的、社会的処遇および労働条件と、これらの人身取引対策との関係について、他国における状況と比較するための資料収集・情報交換を引き続き行った。 アウトリーチに関しては、新たにMSM(男性と性交渉する男性)の性感染症予防および性暴力被害相談の分野においてアウトリーチの経験を積んだ協力者の知見を得、脆弱性の高いグループのジェンダー別の特徴について考察を深めることができた。また、経営者団体との関係の発展から、協力者団体であるSWASHが、働く人の立場に立った労働現場の安全を確保するための講習を、店舗と従業員に向けて行った。反省点としては、課題であった外国人セックスワーカーに対するアウトリーチが、今年度も思うように進まなかったことが挙げられる。 国際比較に関しては、7月にメルボルンで行われた国際エイズ会議に、協力者と協力者団体が参加した。代表者本人も参加の予定だったが、家庭の事情で参加を見送り、文章と口頭での報告、記録映像・音声を通じて、結果を共有した。この会議では、ワークショップを共催して本研究の成果を発信すると同時に、当事者協力者が世界のピアエデュケーションの技術を学んだ。9月には代表者が訪英し、24年度末に欧州議会で英国代表によって発議され採択された、買春禁止と性サーヴィス需要の抑制によって人身取引を抑制するいわゆる「ノルディックモデル」方針の賛否両論について知見を深めた。 成果発表に関しては、予定通り、代表者の論文等執筆以外に、メルボルン会議報告会、エイズウィークに合わせた性感染症予防に関するイベント、ウェブ雑誌などを通じ、一般社会に開かれた形で行うことができた。
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