研究課題/領域番号 |
24510380
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
伊田 久美子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (20326242)
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研究分担者 |
木村 涼子 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70224699)
山田 和代 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50324562)
熊安 貴美江 大阪府立大学, 地域連携研究機構, 准教授 (90161710)
中原 朝子 神戸大学, 男女共同参画推進室, 助教 (50624649)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 若年女性 / 既婚女性 / 貧困 / 自尊感情 / 生活の質 / 暴力の怖れ |
研究実績の概要 |
経済不況の下で拡大を続け貧困の大きな要因となっている非正規雇用問題はそのマジョリティである女性を必ずしも十分に対象化することがなかった。フリーター問題として注目されてきた若年非正規問題においても同様のジェンダーバイアスが先行研究調査に存在し、フリーター定義そのものが女性のみ既婚者を排除するという姓の二重基準を採用している。本研究はとりわけ非正規率の高い高卒以下若年女性層(18~34歳)に焦点を当て、その生活実態を男性との比較可能なサンプルによって多面的に分析し、隠れた貧困の実態と課題を明らかにすることを目指した。ウェブ調査により男女各1000、合計2000のサンプルを得て、まず「フリーター」定義が排除してきた既婚女性の実態を解明する分析を行い、次のような知見を得た。①既婚女性の配偶者のうち正規職に就いていないケースは25.6%を占め、定義が前提してきたように結婚が女性にとって扶養者の獲得を意味するとは言えないことを示すことができた。②また、既婚女性層のうち年収が141万(単身者の生活保護対象年収)に満たない者が80%を占め、貧困予備軍を構成していることがわかった。③さらに年収141万以上のグループと141万未満のグループの比較分析を行ったところ、141万未満グループの自尊感情が有為に低いことが明らかになり、④また年収141万以下グループと異なり、141万以上グループは日常的な暴力の怖れが生活満足度に影響しないという有為な違いがあることがわかった。以上により標準世帯からの逸脱だけでなく標準とされる世帯に包摂されているとみなされる既婚女性においても女性自身の年収が単身でも生活可能な水準に達していることが女性の生活の質に大きく影響することを示すことができた。以上の知見を国内外の学会で報告し、論文として発表した。日本フェミニスト経済学会での報告は予稿集に掲載され、今年度日本女性学会誌に投稿予定である。
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