研究課題/領域番号 |
24510381
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
東 優子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60330601)
|
研究分担者 |
三田 優子 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (20261208)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 国際情報交流(アジア) / 性別違和 / トランスジェンダー / ケア / 支援システム |
研究概要 |
初年度は、研究実施計画に基づき、1) 国内のケアと支援システムについての現況把握および、2) 海外(アジア圏)におけるケアと支援システムについての現況把握を実施した。 1) については、国内における文献調査により、関連文献約600本のデータを収集し、現在内容について精査・分析を進めているところである。さらに、WPATH策定のガイドラインSOC-7の邦訳に関して、国内のキーパーソンとの検討会議を通じて、国際基準の日本社会への応用における困難性について検討をおこなった。 2) については、①地域社会におけるキーパーソンとのネットワーキングとして、8月に松江市で開催されたアジア・オセアニア性科学学会でトランスジェンダーに関するシンポジウムを企画・運営し、関係者とのネットワーキングを遂行した他、9月にマニラ市内で開催されたWHO他共催による国際会議a Consultation on HIV, Sexually Transmitted Infections (STI) and other health needs of transgender people in Asia and the Pacific (2012年9月11~13日)に出席し、キーパーソンとのネットワーキングおよび成果物の作成に携わった。さらに9月訪問の実績を踏まえて1月に再度マニラを訪問し、キーパーソンおよび当事者団体との交流、インフォーマルな聞き取り調査を通じて、フィリピン社会における現況把握を行った。②文献収集と翻訳作業については、研究代表者がその作成に関わった前述の会議成果物 ”HIV, Sexually Transmitted Infections and Other Health Needs of Transgender People in Asia and the Pacific"の翻訳作業を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究(3年計画)の目的は、性別違和や伝統的なジェンダー概念の枠組みに収まりきらない状態=性別不和(Gender Non-conformity)をテーマに、(1)固有の経験や営み(文化的装置)をもつアジア諸国におけるケア・支援システムの現況を把握すると同時に、欧米の専門家が中心となって構築された言説(医学的知識の応用)がどのように再生産され、現在のシステムにどのような影響を及ぼしてきたかを考察する、(2)(1)を通じて収集された資料・文献をデータベース化する、(3)これまで不可視化されてきた地域から発信されている情報・研究成果を国際的議論や学術的研究に反映させ、性科学やセクシュアリティ研究あるいはクィア・スタディーズの進展に寄与する、以上3点である。初年度は、研究実績の概要でも述べた通り、研究実施計画に基づき、1) 国内のケアと支援システムについての現況把握および、2) 海外(アジア圏)におけるケアと支援システムについての現況把握を実施した。国内の文献調査については順調に進展しているが、国内の実践事例の収集と内容分析、関係諸団体への質問紙調査については、着手できていない。これは、研究実施計画の中でももっとも実施困難が想定された海外(アジア圏)の地域社会におけるキーパーソンとのネットワーキングや現況把握を初年度に先行させたためであり、その成果として、2つの国際会議への参加を通じて国外を対象とした研究実施計画については、当初の計画どおり順調に進展しているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
研究課題1「アジア圏におけるケアと支援システムの実態に関する調査研究」については、1)国内のケアと支援システムについての現況把握として、①国内の実践事例の収集と内容分析、②関係諸団体への質問紙調査、③ケアと支援の実施機関訪問、参与観察を遂行する。さらに、2)海外(アジア圏)におけるケアと支援システムについての現況把握については、初年度に構築されたネットワークを通じて、文献収集と翻訳作業を遂行する。 研究課題2「アジア諸国におけるガイドラインの比較研究」については、WPATH国際学会(2013年:タイ)での発表、関係者へのインタビュー調査を実施すると同時に、諸外国のガイドライン収集を実施する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、国内での学会発表旅費(日本性科学学会、GID学会、日本思春期学会)および国際学会発表旅費(WPATHタイ大会、WASブラジル大会)が予定されている他、国内外の文献収集およびその翻訳作業、データを共有するためのウェブサイトの開設とメインテナンスが主な使途となる予定である。
|