研究実績の概要 |
国際的診断基準であるDSM-V(2013)およびICD-11(2017)が改訂されるにあたり、「性同一性障害」をめぐる 議論の動向が注目されている。そこで本研究では、(1)アジア諸国におけるケア・支援システムの現況を把握し、(2 )収集された資料・文献(各国の母語および英語による)をデータベース化することで、(3)性別違和あるいはGender Non-conformityに関する学術的研究の進展に資することを目的として実施された。(1)の主な成果物としては、WHOやAsia-Pacific Transgender Network (APTN) ら国際組織が主体となって進められたプロジェクトに参画し、The Asia Pacific Trans Health Blueprintの策定に関わり、その日本語版を作成した。(2)については、国内で1994年から2012年までに発表された1, 483件の文献を収集した。学問領域別に「性同一性障害」の言説が発展してきた経緯を分析した結果については、21st Congress of the Wolrd Association for Sexual Health (Porto Alegre, Brazil(2013年9月21~24日)において"DATABASE ON TRANSGENDER HEALTH/RIGHTS IN JAPAN"と題したポスター発表、およびシンポジウムFocus on Sexual Rights in Practiceにおいて"A Hidden Traps in the Health-Based Approach to Transgender Phenomenon in Japan"と題した口演で発表した。また、「アジア諸国におけるガイドラインの比較研究」については、WPATH刊行の国際的ガイドラインの日本語版を完成させ、その監訳者として上記バンコク会議開催期間中に開催された翻訳者会議において、各国における現状に関するヒアリングを行った。2013年3月には研究協力者であるSam Winter(香港大学)を大阪府立大学ゲスト・プロフェッサーとして招聘し、シンポジウムを複数回開催したほか、2015年3月には上記Blueprintの策定に関わった研究者2名を海外から招聘し、シンポジウムを開催した。
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