本研究で日本の戦争映画に描かれる女性は、銃後において苦しむことで「女性=被害者=日本」を強調するか、「従軍看護婦」「電話交換手」として兵士と共に戦うなど、戦いにおいてむしろ積極的に貢献する(加害者役割を示唆する)役割をもつことが明らかにされた。女性中心の映画、レビュー、そのコンテクストの分析結果は、後者の場合、戦場にいるのは「他者」とされる辺境(沖縄・サハリン)の女性であり、「本土」女性は「被害者」の立場を強調する。戦争記憶の言説のなかで、ナラティブを通し女性の主体が妥協・調整・交渉され記憶は構築される。記憶の女性化は、戦後日本における戦争物語に対する支配的(男性的)な欲望と共存するのである。
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