戦後ドイツ哲学と現代フランス思想の歴史的研究に裏打ちされた公共性(公共空間)の思考を構造的に行い、次の点を明らかにした。 (1)公共性は、分割(自他のずれ)を要件とするがゆえに、全体性ないし合一から明確に区別される。(2)それは、絆の現前しない共同体というほとんど不可能な可能性であって、その根底には、他者が他者であり自己が自己であるようにする「存在することの倫理」がある。(3)この意味での公共性(公共空間)は、光あふれる未来の世でもなければ、欠損だらけのこの世界そのままでもなく、私たちの生きるこの世界とほんの少し異なる平和の地としてはるかに望まれ、いまここに到来しつつある。
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