研究課題
研究代表者および分担者は各自の手法や伝統に則り画像と知覚の研究を行った。その成果は、小熊、清塚編『画像と知覚の哲学―現象学と分析哲学からの接近』(東信堂、2015年)において公表された。小熊と田口は現象学的手法で、画像研究を行った、いずれも画像表象の三種の契機(像物体、像客体、像主題)の関連も考慮しながら、小熊は、フッサールの遺稿を参照しつつ、画像表象において、措定を中止する「中立性変様」の役割が不可欠であることを中心に考察し、田口は、フッサールの考察を超えて像経験がどのように知覚によって媒介されている受動的経験であることを中心に研究をおこなった。清塚は、絵画における「見える内容」と「描写内容」との分離と関連について、ホプキンスとブラウンの分析を検討しつつ考察を行った。清塚は、両者の関係は一様ではなく、一方の、見える内容を描写様式に特徴づけに貢献するものと捉える見方と、他方の見え流内容をそのまま描写内容として受け入れるような捉え方の中間に実際の個々の見方が位置づけられると考えた。小熊の考察が画像の非現実性の考察を含むのに対し、清塚の考察は、絵の非現実的な見え方が、絵の描写内容との関係でどう意味づけられるか、という問題であり、描き方(画風)、解釈に関連する考察である。山田は、ウィトゲンシュタインのアスペクト転換の考察を手がかりに知覚と概念ないし意味との関連を考察した。この転換には、視覚的体制化に関わる非概念的仕方と概念的仕方がある。後者では、絵とあるカテゴリーの対象との類似性を「見る」ことによって対象が再認される。小熊は、知覚作用における「感覚」の在り方と「赤い」といった「意味づけ」の関連を時間的観点から考察し、知覚は未来予持・現在化・過去把持という時間的契機を含み、「感覚」も「意味づけ」もこれらの契機を通して生成するということを、フッサールを参照しつつ明らかにした。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (7件)
思想
巻: 第1102号 ページ: 80-103頁
Taiwan Journal of East Asian Studies
巻: Vol.12, No.1 ページ: pp.25-40
ハイデガー・フォーラム
巻: 第9号 ページ: 37-48頁