本研究の最終年度として、今年度は、関係団体への提言や研究成果のとりまとめと書籍による出版を行った。 本研究全体の成果としては、社会的合意形成の方法論の理論と実践を統合する視点をプロジェクトマネジメントにもとめ、著書『社会的合意形成のプロジェクトマネジメント』において正義の概念および幸福の概念の倫理的価値構造について考察を深めて、「実行可能な正義・実現可能な幸福」の概念として位置づけた。とくに実行可能な正義においては、ステークホルダーの意思決定時における選択肢の平等性、公平性の実現のための情報管理の適切さがもっとも重要な要素であることを示した。 地域づくりに関する社会的合意形成については、「出雲大社神門通りと温泉津温泉」と題する文章を雑誌『住宅』において、災害対応に関する社会的合意形成を「恵みと脅威のマネジメント思想」として科学技術振興機構のScience Windowにおいて、また、医療看護方面における社会的合意形成について日本老年看護学会第20回学術集会において「地域の中の看護と社会的合意形成」と題する講演において意見を述べた。 当初、本年度の最終成果の社会還元のために小冊子を再生する予定で予算を確保したが、その内容を社会的合意形成に関する書籍として『社会的合意形成のプロジェクトマネジメント』(コロナ社、2016年)に組む込みことができたので、当初予算は、アウトリーチのために使用した。すなわち、このテーマについての実践・研究を行っている関係機関や関係者に送付して、書籍に対するコメントの返送を依頼し、今後の研究に資することができるようにした。また、社会的合意形成のプロジェクトマネジメントの方法を含むまちづくりの理論・実践書として刊行した『わがまち再生プロジェクト』(KADOKAWA、2016)においても研究成果の社会還元を進めた。
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