研究課題/領域番号 |
24520011
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮原 勇 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90182039)
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研究分担者 |
宮浦 國江 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (50275111)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 哲学 / 現象学 / 認知言語学 / 主観性 / 相互主観性 / 主観化 |
研究概要 |
今年度はフッサールの『デカルト的省察』の第5省察「モナド論的相互主観性としての超越論的存在領野の解明」の分析を行い、そこでの他者認識の理論には「第一次的領域」といういわば身体的領域、メルロ=ポンティの用語では「肉」(la chair)の次元が根底にあることを確認し、そのような仮定が単なる自然主義的な素朴性とどのような点で違うのかを検討し、問題点を摘出した。その際に「ここ」と「そこ」の交換という視点の交換の意識が重要であるという点に着目し、そのことが言語現象においてどのような表現として現れるかを認知言語学の文献を参考にして分析した。そして、それとの関連で認知言語学でのsubjectificationとintersubjectivityとの連関に関してgrammaticalizationの問題として考察し、コミュニケーション学会東海支部で発表するとともに研究を深めた。さらに、現象学的研究としてMcTaggartのThe Unreality of Timeでの時間概念の分析を検討し、それがヘーゲルの観念論的認識論を前提とすることを明らかにし、フッサールの内的時間意識の現象学的分析と対応させて論じた。これは京都言語学コロキアムで発表した。また、その際に認知言語学での時間表現に関する分析を検討し、時間を一つの流れというメタファーによって表現すると、二つの互いに逆の方向の流れとして表象される言語現象を分析し、現象学の立場から同一事態を視点を変えて記述したものであり、それは主観化されているものかね客観化されているものであるか、つまり相互主観化されているものであるかの違いであることを明らかにし、時間意識や時間表現の問題を、主観性や相互主観性の問題であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
京都大学人間環境学研究科の山梨正明教授主催の研究会において認知言語学の立場からの主観性研究や社会性研究の現状についての情報が入手でき、現象学と認知言語学との学際的研究が順調に遂行できているからである。 また、各種の言語のデータに関しても、アルバイトを使って詐欺用ができ論文作成の時点で有効に利用ができている。
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今後の研究の推進方策 |
フッサールのテキストとしては、Husserlian Bd.XIII, XIV, XVでのZur Phaenomenologie der Intersubjektivitaetでの相互主観性の理論の検討を行うとともに、時間論に関して言えばHodgsonのThe Metaphysic of Experience (1898)での時間意識の分析がフッサールの分析とどう違うのかの検討を行う。研究会等のでは旧山梨研、現在谷口研で主催されている京都言語学コロキアムに参加するとともに関西大学の認知言語学研究者鍋島氏との学術情報の交換や討論によって現象学と認知言語学の学際的研究を進展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
特に京都大学や関西大学への研究会出席、文献収集、情報交換、さらには国際学会への出席等の旅費を使うとともに、若干の史跡の購入や、言語データの入力、分析やフランス語や中国語、モンゴル語の文法についての分析に対する謝礼なとに使用する。
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