研究課題/領域番号 |
24520012
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉村 靖彦 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20303795)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 西田幾多郎 / 田辺元 / 歴史的世界 / ベルクソン / シモーヌ・ヴェイユ |
研究概要 |
本研究が狙いとするのは、1930年‐40年代の西田・田辺を始めとする京都学派の哲学を、同時代の仏独哲学の幾つかと交差させつつ並行的に研究し、双方が深く触れ合う諸々の問題系と思考空間を「宗教哲学と歴史哲学の絡み合い」という姿で浮かび上がらせることである。本年度は、(1)これまで研究代表者が行ってきた仕事の中で本研究の土台となりうるものを纏める作業、(2)本研究の主たる参照材料となる西田・田辺の主要テクストの精読、(3)京都学派の哲学と仏独哲学の双方においてこの時代に顕著になってきた歴史哲学的関心についての思想史的分析、の3点にわたって研究を進めた。 (1)については、田辺のベルクソン解釈、とくに1934年の「社会存在の論理」で組織的に提示された『二源泉』の読解の哲学的意義を、両者が自らの思索に取り込んでいたフランス社会学派の理論やトーテミズム論に立ち戻って検討した。この作業との関連で、田辺のテクストの一部をフランス語に訳して解説を付し、『Annales bergsoniennes』の第6巻にて刊行した。 (2)については、西田は『無の自覚的限定』(1932)から『哲学論文集第3』(1939)、田辺は「社会存在の論理」(1934)から「種の論理の意味を明らかにす」(1937)あたりまでの諸論考を精読し、両者の歴史的世界論を身体や社会、行為といった問題を軸に読み解いた。 (3)については、西田や田辺において歴史的世界論への関心の深まりを促した要因として、同時代のマルクス主義思想の動向に着目し、1930年代前半の「若きマルクス」の再発見が当時の思想界にもたらした影響を調査した。またその観点から、コジェーブやシモーヌ・ヴェイユのテクストと西田・田辺とを交差的に読み、いくつかの興味深い論点を引き出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、この3年間の研究の土台となるような基礎研究に徹したが、基本テクストの解釈と思想史的な調査との両面において、当初考えていた以上の成果が得られた。この点については大いに満足している。 ただ、成果の一部をフランス語で発表することはできたが、日本語で発表する機会をまだ得ていないので、できるだけ早い内に口頭発表か論文の形で発表したい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を土台にして、引き続き基本的な作業を続けていくと共に、海外の研究者との議論や研究発表、また海外での資料調査の機会を多く設けていきたい。本研究は、異なる文脈の思想を複雑に交差させるものであるため、アイディアを醸成・展開させるためにも、またそれを検証するためにも、多様な思想的交流の場に身を置くことが必要だと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度にまとめて海外での調査や発表を行った方がよいと判断し、本年度は当初予定していた額の予算を使わなかった。それゆえ、研究費の相当部分を海外旅費に当て、その方面の研究活動の充実を図りたい。今春に研究代表者が共編者となった日本哲学のフランス語でのアンソロジー(Philosophie japoinaise. Le néant, le monde et le corps, Paris, J.Vrin)が刊行されたので、それに関連する研究集会をパリで開催することも検討している。
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