本研究の課題を構成する3人の思想家について、それぞれ研究目的との関連のもと論文執筆や研究発表を行った。具体的には、ハイデガーについて、日本のハイデガー研究者を総動員して『ハイデガー読本』(法政大学出版局)の共同編集に従事するとともに、本研究の主題である「技術」に関連する論考を寄稿し、それ以外に学会での依頼発表を行った。西田については、同じく課題に含まれる「場所論」についてのドイツ語論文を発表し、さらに「技術論」についての日本語論文(シンポジウムの提題をもとにしたもの)を発表した。また「技術知」を照らし出すための宗教知を考察する側面から、学会発表を一本行った。最後に西谷については、「宗教と科学」についての日本語論文を一本発表し、また「技術論」をめぐって以前発表した英語論文を加筆修正し、英文の哲学雑誌に発表した。これらそれぞれの思想家についての研究を深める一方で、年度末にかけて、「場所」をめぐる西田とハイデガーの対決に向けての論文執筆に携わった。これは、研究全体からすると第一歩に留まるものであるが、本研究課題をさらに掘り下げていくための方向に踏み出したという意味で、自分の中では非常に大きな意味をもつものとなり得た。 海外出張として、10月から11月にかけて約一週間、ドイツのヒルデスハイム大学(ロルフ・エルバーフェルト教授)、ハノーヴァー哲学研究所(ユルゲン・マーネマン所長)、オーストリアのウィーン大学(ゲオルク・シュテンガー教授)を訪問し、ヒルデスハイム大学では西谷哲学の翻訳プロジェクト、ハノーヴァー哲学研究所ではカトリックの立場からする技術哲学の研究、ウィーン大学では間文化哲学の立場からの日本哲学研究の可能性について、それぞれ情報を収集することが出来た。
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