研究課題/領域番号 |
24520014
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中山 康雄 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60237477)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 科学技術進化論 / 信念構造論理学 / 明示的認識論理学 / 動的規範論理学 / 四次元指標主義 / 基礎的存在者 / 四次元主義的認識論 / 科学哲学 |
研究実績の概要 |
平成26年度では、科学哲学の基盤となる存在論と認識論についての基礎研究をさらに展開するとともに、時間と進化と文化との関係について考察した。この考察を基盤として、論文を発表するとともに(英語単著論文2本、日本語単著論文4本)、研究発表を精力的に行った(英語単独発表3件、日本語単独発表3件)。特に、「多元的言語論に基づいた科学哲学の構築」というテーマのさらなる掘り下げを行うことができた。それは、科学活動の中で用いられる言語の数の増加が科学活動の領域の分岐という進化論的発展の結果起こるものであることの示唆である。この問題は、第二回東アジア現代哲学会議の英語での発表「An Evolutionary Theory for Science and Technology」で議論され、科学技術進化論という科学哲学における新しいアプローチが提案されている。 科学活動の理論的基盤の転換を厳密に描くためには、信念改訂の問題を明らかにする必要がある。国際ワークショップLENLS 11で発表された論文「Formal Analysis of Epistemic Modalities and Conditionals based on Logic of Belief Structures」は、信念構造論理学を提案し、信念改訂への新しいアプローチを示したものである。信念構造が専門家に共有されると、理論構造が定義でき、これを用いて科学活動を動的に描くことができることをこの発表で示唆した。平成26年度の研究の一部は、科学活動の動的記述に関する研究を展開するための基礎理論を築くためのものでもある。その他、論文「主体と時間と情報更新」では相対性理論における観測と時間の関係についての考察が展開されている。また論文「四次元主義の存在論と認識論」と論文「利他主義と共生に関する哲学的分析」では、「基礎的存在者」という概念を、宇宙論から文化論までという広範な範囲で用いることができることが示されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度に引き続き平成26年度も、精力的に論文を発表した(英語単著論文2本、日本語単著論文4本)。このうち1本の英語論文は、査読を通過してSpringer社の人工知能関係の著書に収録された。また精力的に英語と日本語の研究発表を展開し(英語単独発表3件、日本語単独発表3件)、研究成果を広く発信することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、多元的言語論から科学技術進化論へという発展をさらにすすめる研究を行う。このとき、〈拡張された行為主体〉と概念を用いた道具の位置づけと機能概念との関係なども明らかにし、人工物の存在論について考察する。この人工物の存在論は、科学と技術の関係を描写するための基盤となるものである。そしてこれらの成果を、国内外の学会や国際会議で発表するとともに、論文の投稿をしていく予定である。
|