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2012 年度 実施状況報告書

多元主義としての根本的経験論ージェイムズ=西田連関を基軸とした比較系譜学的研究ー

研究課題

研究課題/領域番号 24520016
研究種目

基盤研究(C)

研究機関神戸大学

研究代表者

嘉指 信雄  神戸大学, その他の研究科, 教授 (20264921)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード多元主義 / 根本的経験論 / 日本近代哲学 / ジェイムズ / 西田幾多郎
研究概要

初年度は、主として、「純粋経験の立場」を出発点とした西田哲学及び京都学派の、近代日本哲学・思想における総体的な位置づけと特質を再検討するため、明治維新初期における西欧思想の受容、とりわけ、中江兆民によるルソー思想の受容の在り方を考察した。その結果、兆民思想を基軸とすることによって、西田及び京都学派の歴史的・政治的軌跡を相対化・主題化しうる展望を得た。
6月には、仏教思想と現代哲学の比較研究で知られるJin.Y.Park氏(American Univ., U.S.A.)を招いて、連続研究会を開いた。こうした研究会での議論などを通じて、仏教的哲学としての京都学派の主題及び論理の特質を浮き彫りにする思想史的視座を得ることができた。以上のような考察は、「田辺元『懺悔道としての哲学』における転回・理性批判の射程―ホルクハイマー/アドルノ『啓蒙の弁証法』との比較試論」に反映されている。
また、12月の現象学・社会科学会において発表した「森瀧市郎『核絶対否定への歩み』(1994)再読―「放射線リスク」理解の変容をめぐる思想史的・科学社会学的考察に向けて」は、西谷啓治などとほぼ同じ時期に京都帝大で学び、広島(文理)大で教えた哲学者としての森瀧における平和倫理の形成過程を、西田や田辺から受けた薫陶、専門とした英国倫理研究、被爆体験などとの関係において概観したものであるが、戦後の田辺や西谷による「核時代をめぐる思索」の射程を批判的に問う試みである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「純粋経験の哲学」を出発点とする西田哲学及び京都学派に対する基本的視座を確かなものとすることができた。この成果は、2013年8月、ギリシャで開催されるWorld Philosophy of Congressにて、”Wakes of the Political in Modern Japanese Thought: Chomin, Rousseau, and the Kyoto School Philosophers(近代日本思想における政治的なるものの軌跡――兆民、ルソー、京都学派の哲学者たち)”として発表する予定である。また、英語圏やフランス語圏における根本的経験論の展開に関しても、ウィトゲンシュタインやジャン・ヴァールとの関係において基本的特徴を見定めることができた。
Jin Y. Park(American Univ.)氏を招いての連続研究会は、仏教思想における多元的契機の意義について検討する機会となり、仏教思想を基幹とする西田・京都学派の哲学を新たな視点から考察する手がかりを得ることができた。この連続研究会における報告論文の一つは、すでに日本語に訳し、『愛知』(神戸大学哲学懇話会発行)に掲載し、もう一つの報告論文も現在、翻訳中である。また、戦中の京都学派の歴史哲学及び戦後の自己批判的「平和主義への転回」の意義・射程の検討に向けた一歩として、森瀧市郎と西谷・田辺の戦後思想を比較検討する視点を得たことは大きな成果であった。

今後の研究の推進方策

本年度は、すでに、気鋭の現象学研究者であるジュリア・ジャンセン氏(University College Cork, Ireland)を招いて、連続研究会、「カントとフッサールの”想像力”論―多元主義の様々なる端緒―」及び「現象学と学際的研究における“想像力”―多元主義的アプローチ―」において、カントやフッサールの超越論的哲学とジェイムズ根本的経験論の相違を検討する機会をもったが、さらに、アンドリュー・フィーンバーグなどの外国人研究者を招聘し、倫理学における技術論的転回と多元主義との関連をテーマとする研究会の開催を目指す。
2013年8月、ギリシャで開催されるWorld Philosophy of Congressでは、日本近代哲学と近現代欧米哲学との交流をテーマとしたラウンド・テーブル”Cross-Currents and Vortexes through Translation: Dialogues between Japanese and Continental Philosophy(翻訳を通じた交流・渦流―日本哲学とヨーロッパ哲学との間の対話)“を組織し、連携研究者を含む内外の研究者と意見交換する機会を持つ予定である。さらに、国内では、特に、ジェイムズとウィトゲンシュタインとの関連をテーマとした研究会を開催し、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」や「家族的類似」といった多元主義的テーマとジェイムズ哲学との関連を考察する機会を持つ予定である。

次年度の研究費の使用計画

残額は80円なので、通常の消耗品費として使用。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (2件) 図書 (2件)

  • [学会発表] Wakes of the Political in Modern Japanese Thought: Chomin, Rousseau, and the Kyoto School Philosophers2013

    • 著者名/発表者名
      Nobuo Kazashi
    • 学会等名
      World Congress of Philosophy
    • 発表場所
      アテネ大学(ギリシャ)
    • 年月日
      20130804-20130810
  • [学会発表] 森瀧市郎『核絶対否定への歩み』(1994)再読 ―「放射線リスク」理解の変容をめぐる思想史的・科学社会学的考察に向けて2012

    • 著者名/発表者名
      嘉指信雄
    • 学会等名
      現象学・社会科学会
    • 発表場所
      神戸大学人文学研究科
    • 年月日
      20121201-20121202
  • [図書] Education and the Kyoto School of Philosophy(担当個所Metamorphoses of ‘Pure Experience’: Buddhist, Enactive and Historical Turns in Nishida)2012

    • 著者名/発表者名
      P.Standish & N. Saito, ed.
    • 総ページ数
      235(担当個所、77-90)
    • 出版者
      Springer
  • [図書] アジア・ディアスポラと近代植民地主義(担当個所「田辺元『懺悔道としての哲学』における転回・理性批判の射程―ホルクハイマー/アドルノ『啓蒙の弁証法』との比較試論)2012

    • 著者名/発表者名
      緒形康編
    • 総ページ数
      336(担当個所、263-289)
    • 出版者
      勉誠出版

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公開日: 2014-07-24  

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