研究課題/領域番号 |
24520016
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
嘉指 信雄 神戸大学, その他の研究科, 教授 (20264921)
|
キーワード | 多元主義 / 根本的経験論 / 西田哲学 / 比較哲学 / 自覚 / 矛盾 / 主体 / 国家 |
研究概要 |
本年度は、まず4月に、Julia Jansen氏(College University Cork, Ireland)を招き、“The Imagination in Phenomenology and Interdisciplinary Research: A Pluralist Approach及び “Kant and Husserl on the Imagination: On the Beginnings of a Pluralism”のタイトルのもとに連続研究会を開催した。さらに8月には、ギリシャで開催されたWorld Philosophy of Congressにおいて、日本近代哲学と近現代欧米哲学との交流をテーマとしたラウンド・テーブル”Cross-Currents and Vortexes through Translation: Dialogues between Japanese and Continental Philosophy“を、連携研究者を含む内外の研究者とともに組織するとともに、“Wakes of the Political in Modern Japanese Thought: Nishida, (Nakae), and Tanabe”のタイトルで発表し、日本近代哲学における多元的思想の交流について意見交換する機会を得た。さらに、12月上旬の「アメリカ哲学フォーラム」立ち上げ準備会(京都大学)の「ワークショップ:アメリカ哲学の地平―――様々なる系譜・交流・可能性」において提題し、2月―3月には、 “New Perspectives on Japanese & Asian Philosophy: Traditions Engaged with Contemporary Issues” の3回の連続ワークショップを開催した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『善の研究』の国家論におけるルソー評価がはらむ問題性を出発点として、兆民によるルソー『社会契約論』の翻訳『民約譯訳』にまで溯ることにより、近代国家における「市民」をめぐる原理的問題がより明確なものとなり、「多元的国家論」の意義が問題の核心にあると考えるに至った。これは、ジェイムズと西田における「統一」「多元性」概念の違いをめぐる本研究課題の主たる問いに関わるものであり、大変大きな意義を有する。また、『禅の研究』発刊とほぼ同時代の出来事である、平塚らいてうが関わった「母性保護論争」は、国家と国民の関係をめぐる問題について、あるいは、「自覚」と「矛盾」の多様性について、異なる角度から光をあてうるものであり、近代日本における西田哲学にとっても大きな意義を有するとの展望を確かなものとすることができた。また、ジェイムズに関しては、特に、Antonio DamasioのDescartes’ Error(『デカルトの誤り―情動、理性、人間の脳』におけるジェイムズの「情動」理解が一面的なものであり、より正確な理解のためには、『宗教的経験の諸相』なども含めたジェイムズ哲学の全体における「情動」と「反省」の関係の総合的理解が必要であることが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、まず、7月上旬に京都大学で開催される「アメリカ哲学フォーラム」第一回大会に合わせてカーリン・ロマーノ氏(Ursinus College)を招いて講演会を開催する予定である。ロマーノ氏は、近著America the Philosophicalなどで知られるアメリカ哲学研究者・文芸批評家であり、ジェイムズやデューイの現代的意義について意見交換を目指す。また、Russell GoodmanのWittgenstein and William James に関心をもつ何人かの研究者たちと、本書の翻訳を最終的目標とした研究会を複数回開催し、特に、ジェイムズにおける多元主義の現代的意義について考察を進める。さらに、こうした研究成果は、特に、今年11月にヘルシンキで、また、来年2月に京都大学で開催されるアメリカ哲学関係の国際会議で発表する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
予想の使用総額と実際の使用総額のあいだにいささかの差が生じてしまったためである。 必要文具などの支出にあてる予定である。
|