研究課題/領域番号 |
24520020
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岡部 勉 熊本大学, 文学部, 教授 (50117339)
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研究分担者 |
長友 敬一 熊本学園大学, 経済学部, 教授 (20352396)
東谷 孝一 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (30274400)
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キーワード | 行為論 / 価値論 / 理性論 / ポール・グライス / アリストテレス / 合理性 / 国際情報交換・米国 |
研究概要 |
本年度の成果の第一は、グライス晩年の理性論、行為論、価値論に関する主要著作の翻訳『理性と価値 後期グライス形而上学論集』(2013年11月、勁草書房)を出版できたことである。翻訳を出版するに当たって、①理性論のテキスト原文に含まれる多数の誤りを訂正すること、②グライス晩年の形而上学的思索の展開を可能な限り明確に跡づけること、この二つに留意した。前者に関しては、昨年度実施したカリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館におけるグライスの遺稿調査に基づいて、的確な修正ができた。また、後者に関しては、今年度新たにバンクロフト図書館から入手した遺稿のコピーに基づいて、グライスが1967年にバークレーに移った後のかなり早い段階から形而上学的思索に取り組んでいたことを跡づけることができた。この点に関わる成果は、上記翻訳の「訳者解説」において公表した。 本年度の成果の第二は、研究代表者が所属する学部の求めに応じて、上記翻訳に関する書評会を開催したことである。この書評会において、まず、研究代表者がグライスによるデイヴィドソン批判の主要論点を整理し口頭発表し、引き続いて、研究分担者の長友敬一氏と研究協力者の飯田隆氏が上記翻訳の意義について口頭発表した。 また、本年度は、①前年度における行為と価値をめぐる議論の整理を継続すること、②本研究の最終目標である、行為と出来事の違いを明らかにするために、グライスによるデイヴィドソン批判の眼目を価値論・理性論の視点から整理し直すこと、③人間の合理性と価値の起源について明確な説明を与えること、以上三つの目標を立てて、研究代表者が主催するグライス研究会を中心にして、その実現を図ってきた。最終年度に当たる次年度には、上記論点に関する研究成果発表の場として、福岡大学の協力を得て同大学でのシンポジウム開催を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度及び今年度実施したカリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館におけるグライスの遺稿調査の成果は予想をはるかに上回るものがあった。その結果、拙訳『理性と価値 後期グライス形而上学論集』(2013年11月、勁草書房)に、グライス晩年の思索に関するこれまで未公表の多くの知見を盛り込むことができた。 また、研究代表者が所属する学部の求めに応じて年度末に開催した、上記拙訳に関する書評会は、当初予定していなかったものであるが、参加者各位の協力を得て、今後の研究の方向性を見極める上で実り多いものとなった。 昨年度までの円高傾向から一転して本年度は円安傾向が強まり、海外での調査には一定の制約が課せられる状況であったが、得られた成果は当初の計画をはるかに上回るものであった。
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今後の研究の推進方策 |
最終26年度には、、①行為と価値をめぐる議論を整理すること、②本研究の最終目標である行為と出来事の違いを明確にすること、③人間の合理性と価値の起源について明確な説明を与えること、以上三点をめぐる「行為論おけるグライスの戦略に関するシンポジウム(仮称)」(福岡大学関係者との共同開催を計画中)において、本研究の研究成果を研究代表者及び研究分担者がそれぞれ口頭発表する予定である。なお、本シンポジウムには、本邦における代表的なデイヴィドソン研究者(南山大学の服部裕幸氏)に参加を依頼することを考えている。 また、研究成果発表に関しては、研究代表者及び研究分担者が上記シンポジウム以外の学会ないし研究会での口頭発表、雑誌等における論文発表を積極的に行うことを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算消化の状況を見極めた上で、グライス研究の現状を調査するために英国(オックスフォード大学)を訪問する計画であったが、円高傾向が一転して円安傾向に強く傾いたために予算が不足して、計画を取り止めたことによる。 次年度11月初旬に、デイヴィドソン研究者を招いて、福岡大学関係者の協力を得て福岡大学においてシンポジウムを開催することを計画している。そのための打ち合わせ旅費等が主要な使途である。また、次年度は、カリフォルニア大学バークレー校のバンクロフト図書館を直接訪問してグライスの遺稿調査を実施することは、次年度の予算に限りがあるため困難である。代替措置として、遺稿のコピー送付を同図書館に依頼する予定である。
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