研究課題/領域番号 |
24520021
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
八幡 英幸 熊本大学, 教育学部, 教授 (70284718)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カント倫理学 / 物語 / 判断力 / 格率 / 普遍主義 |
研究概要 |
平成24年度(初年度)の研究では、当初の研究計画(3年間)に掲げた3つの目標(【1】カント以降の普遍主義的な規範理論にとっての判断力の意義の明確化、【2】物語論と判断力論の関連の明確化、【3】普遍主義的な規範理論の評価の再検討)のうち、【1】および【2】に関係する以下のような検討作業を行った。 まず、カント倫理学について、物語および判断力との関連を具体的に検討しうる場面として、その「格率倫理学(Maximenethik)」としての側面に注目した。物語との関連については、カントのテキストにおいて格率が持つ意外なまでの物語性や、人間学講義や歴史叙述との関連に注意が必要であることを指摘した。他方、判断力との関係については、個々人の人生という「特殊なもの」について特殊な法則(ある種の「普遍的なもの」)を見出すという点で、格率形成には反省的判断力のはたらきが欠かせないという見方を示した。定言命法の核心に格率が埋め込まれていることこそが、カント倫理学における物語および判断力の重要性を示しているのである。これらの論点は、八幡英幸「倫理学における判断力の問題(3)―格率の意義とその形成過程を中心に―『熊本大学教育学部紀要(人文科学)』第61号(2012年12月)にまとめた。 その一方で、カント以外の普遍主義的な規範理論(特に、R.M.ヘアの功利主義、J.ロールズの正義論)について物語および判断力との関連を検討するという作業は、文献調査および学会・研究会等での情報収集を行っている段階であり、その成果をまとめるには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績に示したように、カント以外の普遍主義的な規範理論(特に、R.M.ヘアの功利主義、J.ロールズの正義論)についての検討作業は若干遅れている。しかし、その反面、当初の計画では二年目以降に考察する予定であった物語論と判断力論の関連について、初年度の研究の中で、カント倫理学における格率の意義を明らかにすることにより一定の見通しを示すことができた。研究の順序はこのように若干変更したものの、カント以外の普遍主義的な規範理論についても文献収集などは進んでおり、研究全体はおおむね順調に進展していると考えられる。 なお、研究代表者は、平成25年度末まで勤務先学部で多忙な職(教務委員長)についているため、今後も若干の遅れが出ることが予想されるが、研究期間の3年目でその分は取り戻したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度(2年目)以降の研究では、まず、当初の研究計画に掲げた目標【1】および【2】に関連して、カント以外の普遍主義的な規範理論(特に、R.M.ヘアの功利主義、J.ロールズの正義論)について物語および判断力の意義を明確化するための作業を進めたい。その際、これらの規範理論に関する近年の研究動向(特に若手研究者の解釈)を視野に入れたい。また、平成26年度(3年目)には、これらの作業の成果を踏まえ、【3】普遍主義的な規範理論の評価の再検討へと作業を進めたい。その際には、①カント倫理学自体の研究者(R・ブラント、W・シュタルクなど)、②カント倫理学の現代的意義の検討者(Ch.コースガードなど)、③普遍主義への批判者(A・マッキンタイア、B・ウイリアムズなど)の議論を視野に入れたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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