本研究ではまず、人間(現存在)の根本的な態度の一つである聴くことを取り上げ、聴くことは人間が他者との共同存在であることの核心であることを明らかにした。次いで、医療技術の観点からハイデガーの技術論を捉えなおし、現代は医療技術がピュシスに取って替わろうとしており、人間はそれぞれが独自の身体を生きることが看過されていることを指摘した。さらに、ハイデガーが人間を「喜びと痛みの間」と捉えていることを踏まえて痛みを主題にした研究を行い、人間は痛みから逃れられないこと、このことが医療の原点であることを論じた。
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