研究課題/領域番号 |
24520024
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
桐原 隆弘 下関市立大学, 経済学部, 教授 (70573450)
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研究分担者 |
中島 邦雄 独立行政法人水産大学校, その他部局等, 教授 (00416455)
今井 敦 龍谷大学, 経済学部, 准教授 (10380742)
小長谷 大介 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (70331999)
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キーワード | 因果性概念 / 宗教史 / 科学技術史 / 歴史哲学 |
研究概要 |
まず主要テキスト『技術の完成』の訳出・訳文チェック作業に関しては、定例研究会を全10回開催した。テキスト33章から41章(S.120-S.153)までの精読・訳文チェックおよび内容についての討議を行った。 つぎにユンガー技術哲学に関する研究に関しては、桐原(代表者)が哲学的位置づけを、今井(分担者)が文学的位置づけを、それぞれ論文によって明らかにした。論文作成にあたってユンガーのテキストを再読することにより、いくつかの新たな知見が得られたことが成果として挙げられる。たとえばユンガーは、近代科学の勃興期から巨大技術の時代への移行に際して、因果性の概念が(リスボン大地震によって動揺させられた)「神の摂理」から、認識し支配・利用することの可能な「自然必然性」へ、さらに(タイタニック号沈没事故に象徴されるように)巨大技術の自然への過大な負荷への反作用としてもたらされる大規模事故にみられる、洞察の困難なある種の「運命論的因果性」へと推移していく、という、宗教史と科学技術史に照らし合わせた歴史哲学的見解を表明している(桐原2014)。 またエルンスト・ユンガーとの比較を通じて新たに得られた知見もある。エルンストおよびフリードリヒ・ゲオルクの兄弟は「総動員/総流動化」に技術の本質作用を認める点において共通しているが、技術を使用し対象を支配する「労働者の形態」に身を投じることに人間の自由を見いだそうとしたエルンストとは対照的に、フリードリヒ・ゲオルクは自動機械と化した「権力への意志」が人間と自然を支配するという事態が技術の本質であるとする。グローバル化や流動化社会の地球規模での危機をいち早く指摘したのがフリードリヒ・ゲオルク・ユンガーの技術論なのである(今井2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は主要なテキスト『技術の完成』の精読(訳出・訳文チェック)ならびに参加メンバーの論文執筆の両面で一定の進捗が見られたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題最終年度に当たり、まとめとなるような研究成果を出す予定である。具体的にはテキスト『技術の完成』の訳書の出版に向けて訳出作業・訳文のチェック作業を効率的に進めること、そして参加メンバーのさらなる論文執筆が課題となる。後者に関しては、昨年度公表した論文の成果を踏まえ、F・G・ユンガー技術哲学の文学・哲学・科学史における位置づけを一層明確にする。昨年度は桐原(代表者)が哲学的位置づけを、今井(分担者)が文学的位置づけを、それぞれ論文によって明らかにした。今年度はそれに加えて、当初予定していたエコロジー思想史および科学技術史との関連についても成果を出す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究協力者の福山(東京在住)が家庭の事情により年度後半の研究会を欠席しているため、主として旅費の出費が当初予定より減少したため。 研究協力者の福山の研究会への参加の可否をふまえ、必要に応じ他の研究協力者(すでに当初メンバーではない数名が研究会に参加している)に下関での研究会に参加してもらい、旅費を支払う。
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