研究課題/領域番号 |
24520025
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
長町 裕司 上智大学, 文学部, 教授 (90296880)
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研究分担者 |
竹村 牧男 東洋大学, 文学部, 教授 (20175699)
宮本 久雄 上智大学, 神学部, 教授 (50157682)
田中 裕 上智大学, 文学部, 教授 (70197490)
伊藤 益 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (80184662)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 共生 / 宗教哲学 / キリスト教 / 仏教 / 日本思想 |
研究概要 |
日本もその中に位置する東アジアという歴史的伝統からの知恵と西洋の宗教哲学的思考との調和的統合を核としつつ、同時にまた地球的規模での射程の広い共生のあり方の探究を学究上の目的とする上で、平成24年度は以下のように研究成果の進展があった。 1.「宗教思想から開かれる共生」の問題地平を明確化してゆくために、研究代表者と各研究分担者及び他の研究協力者との研究会合を定期的に開催し、それぞれの専門領域からの学術的貢献が表明された(その一つの成果として、宮本久雄 編 『宗教的共生の展開』 教友社 2013年3月 248頁 が刊行された)。 2. 2013年3月9日(土)/10日(日)両日に亘って、上智大学にて『宗教経験に於ける「個の自覚」と「普遍性」― 古来よりの宗教思想及び宗教哲学を通しての思索 ―』と題しての講演会及びシンポジウムを開催した。京都大学と関西大学から宗教思想・宗教哲学の専門家を講演者として招聘し、その他多くの各研究者が長時間を今日における宗教性と共生の問題に焦点化したディスカッションを深化させることができた。一般聴講者も50名余の盛況で、質疑応答も含め、本研究課題の進展に大きな成果と反響があった(この講演会とシンポジウムの内容全体は、平成25年度内に一冊の研究報告文書としてもまとめ上げる予定である)。 研究推進の過程において、平成24年度は基礎研究の年度に当てられたが、今後の進展にとって不可欠の段階であった。当該年度は特に、日本の伝統的な宗教思想と仏教的宗教哲学の現在が西洋の精神史に展開を遂げて今日に至るキリスト教思想とどのように対話的に交差する問題領域を開示し、その中から共生のための諸次元を探求する知が開けてくるかを吟味し思索の糧とすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者と各研究分担者がその専門領域内で培われた伝統的遺産を再活性化する基礎研究とすると共に、今日の世界史的な社会・精神状況への対応・適応を通しての「共生の 問題地平」を開明することに重点を置く研究年度とすることを目指した限りで、本年度の 研究状況の進展はおおむね順調であった。各分野での重点的な研究成果が発表され、その各内容は本研究課題に参画する共同研究者たちの間で相互に認知されているし、更なる共同討議のためにも内実の堅固な問題提起と刺激を提供している。 研究実施計画では平成24年度末に既に企画していた第一回目の国際シンポジウムは、平成25年度に延期された。当初の計画を変更した理由は、上記した研究代表者と各研究分担者たちの共同研究が深化発展し、「宗教的思惟を通しての今日的な地球規模での共生」の問題地平と射程が描けるようになることが先行すべきであるという認識に依る。この認識に即して、平成24年度末には代わって、上述したように国内での大規模な講演会/シンポジウムを開催することとなった。 本研究課題が今日の日本社会及び歴史的世界状況に対して極めて重要な問題視点であるとの自覚の上で、研究代表者及び各研究分担者が研究に励んでいることは十分に確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更は特に今後の研究推進上、必要ではないと査定する。研究を遂行する上での新たな課題領域については、本研究課題に参画する研究者諸氏からの発議に鑑みて、さらに検討する必要が生じる可能性もある。 平成25年度は前年度研究内容を継承して深化する研究年度にすると共に、特にエコロジー(環境学)の視点を共生学構築のために不可欠な要因として、その分野を専門とする研究協力者の寄与を重視する。平成25年度の秋には、環境学の研究団体と連携しての共同シンポジウムを開催するプロジエクトも準備中である。その上で、キリスト教的神秘思想と東洋の自然主義的アミニズムとの連繋可能性、仏教的伝統を通しての生命中心的霊性とキリスト教的人格思想との接点を、東西宗教思想における〈個と普遍〉の問題構制を焦点として宗教哲学的に集中研究する年度とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、最初には年度末に計画した国際シンポジウムを次年度に繰り越し、それに代わって国内の研究者を多数招いての講演会及びシンポジウムに変更したこともあって、研究費の使用に変動が生じた。 平成25年度にも、本研究課題推進にとって重要度の高い、然るにそれぞれ重点の異なる二つのシンポジウムを開催し、また海外から専門領域の研究者を招聘しての講演会を開催する予定である。これらの研究集会の開催のための費用(会場準備費、ポスター作製費、大学院生アルバイト代、講演料及び旅費、等)が必要となる。 また研究代表者と各研究分担者たちは、より質の高い研究の推進と研究成果達成のために、図書資料を含め専門領域での研究集会参加のために研究費を使用するように計画したい。 尚、研究代表者は自身の研究のための研究資料収集のための海外渡航(ドイツ、交通費/宿泊費)を年内に計画しており、また平成24年度の終わりに開催した大規模の講演会/シンポジウムの内容全体を研究文書として編集する上で、長期に亘る若手研究者及び大学院生のアルバイトを依頼している。
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