本研究課題であったヴェイユの思想成型におけるブランシュヴィックの直接的な影響の痕跡を特定するには至らなかったが、ヴェイユが受けた1920年代の哲学教育に通底するブランシュヴィック世代の哲学者たちのスピノザ回帰による哲学刷新の潮流を析出することができた。また、ヴェイユの〈スピノザ的〉必然性の概念を、著作の執筆時期別に編纂・翻訳した「シモーヌ・ヴェイユ選集」(全3巻、うち中・後期2巻は本研究期間中に刊行)、および「カイエ」に基づく『重力と恩寵』の徹底的な校訂と翻訳をつうじて総合的かつ仔細に検討し、その成果を翻訳と詳細な訳註に反映させた。
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