研究課題/領域番号 |
24520028
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
飯田 隆 日本大学, 文理学部, 教授 (10117327)
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キーワード | 言語哲学 / 日本語意味論 / 日本語と哲学 / 日本語における量化 / 疑問文の意味論 / 国際研究者交流(アメリカ合衆国) |
研究概要 |
研究第二年目の本年度において、形式意味論上の課題としては、日本語における量化に集中的に取り組み、「どの~も」に典型的にみられるような単称量化と、「すべて」「大部分」といった量名詞を用いる量化の両方を統一的に扱う理論を構成した。その過程で、単称量化と疑問文の双方に「どのN」といった形の表現が現れることに注目して、さらには、量化と疑問の意味論を統合する視点を獲得した。他方、哲学的含意の側面の研究としては、日本語と哲学の言語という問題、記述の理論との関係などについての研究も行った。以上について、さらに詳しく述べるならば、次のようになる。(1) 日本語における量化と疑問の意味論については、現在、大部の英語の原稿 Singular Quantification in Japanese が存在する。その最初の7章は、現在、研究代表者のウェッブサイトで公開中である。(2) 2013年夏にアテネで開催された世界哲学会議で行った講演 "Creating a philosophical language -- lessons from the Japanese experiences" および同年9月における教育思想学会でのコメント「日本語での哲学 その過去と将来」は、日本語の意味論的特性と日本における哲学のあり方の関係についても考察している。(3) 2014年3月に日本大学で開催したワークショップ Workshop on Early Analytic Philosophy では、形式意味論において大きな影響をもった、20世紀初頭のラッセルの記述の理論を中心に、初期分析哲学と現在の形式意味論との関係についても論じられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、日本語意味論を具体的に構成することと、日本語意味論がもちうる哲学的含意を明らかにすることという、二つの部分からなる。本年度は、そのどちらに関しても、計画以上に研究を進めることができた。とりわけ、このことは、前者の部分について言える。 すなわち、昨年度より着手されていた、量化の取り扱いに関して、予想されていたよりも急速に理論を展開することに成功したことが、このように評価する最大の理由である。当初考えていた、単称量化と量名詞による量化を統合することのみならず、日本語の量化と疑問の意味論のあいだに存在する密接な関係を反映するような理論の可能性が明らかとなったことは、大きな成果である。 後者の課題についても、日本の哲学の特性と日本語との関係について、国際的な場所で議論することは、今後の研究のための大きな刺激となった。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、量化と疑問の双方を統一的に扱う理論を完成させることを、最終年度の大きな目標とする。もし可能ならば、それに加えて、間接話法と量化および疑問との関係、さらに、指標詞と単称量化との関係をも扱えるように、この理論を拡張することを試みたい。 日本語意味論の哲学的含意を明らかにするという観点からは、前年度に引き続き、日本語の意味論が、日本の近代哲学の展開に与えた影響について研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額が7,192円生じた理由は、3月に行ったワークショップに必要と見込んだ額が、この分だけ少ないで済んだためである。 7,192円という額は、次年度の予算と合わせて使うのに問題があるような額ではないので、次年度予算中の物品費の中に繰り入れる予定である。
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