研究課題/領域番号 |
24520030
|
研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
長倉 誠一 武蔵大学, 総合研究所, 研究員 (60590015)
|
キーワード | シラー / シェリング / ニーチェ / 自由論 / スピノザ / 自然 / 生命 / 意志の力 |
研究概要 |
ニーチェの「自由」について、スピノザ思想との関係を検討し『武蔵大学人文学会雑誌』に発表しました。これは、ニーチェによるスピノザ受容についてのスキャンデラなどによる最新の研究報告を踏まえ、その上で、ヴルツァーなどによるニーチェ思想とスピノザ思想との関係についての研究を土台に、ニーチェの「運命愛」とスピノザの「神の知的愛」との関係、ならびにニーチェの「力への意志」とスピノザの「コナトゥス」との関係について検討したものです。結論として確認したことは、スピノザは、コナトゥスと神の知的愛、さらには自由を一つの文脈内で捉えたのだが、ニーチェは力への意志という自由と運命愛とを一つの文脈に捉えることに成功したとは言えないこと。ニーチェは、人間の「自由」を「運命」によって諦めざるをえないはずであったこと。ニーチェの「自然主義」はこれを脱しようとしたものともいえるが、この自然主義の提唱そのものが、ニーチェの直面していた事態の困難を示していること。こうした点を確認しました。 シェリングについては、1989年にSchellingiana第一巻として出版された『哲学入門』(1830年のミュンヘン講義)を読み進め、この講義の意義を二点確認しました。まずこの講義が、内容の点では、1836年のミュンヘン講義『哲学的経験論の叙述』の土台であることを確認しました。また、1836年のこの講義には見られない、「積極哲学」の定義も含んでいることを確認しました。これは、わが国における従来のシェリング解釈に対する訂正を求める論拠になるものと考えております。 以上のようにニーチェとシェリングについて研究を推進しました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料調査や発表も、当初の計画に近い状況にあり、おおむね順調であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度にW. E. エーアハルトのシェリング解釈を検討し『武蔵大学人文学会雑誌』に論文を発表しましたが、その際にシェリングの後期哲学についての検討を課題として残したままになっております。そこで、エーアハルトの「ただ一人のシェリング」説を念頭に、1830年のミュンヘン講義を中心に、シェリング後期哲学についてひとまず論文として提示すること。これが今年度の第一の課題です。 シェリングとニーチェの関係については、ショーペンハウアー哲学を仲介にして哲学史上の影響関係という点からも検討しようと目論んでいましたが、次の二つの理由から断念しました。2012年刊行予定の『ショーペンハウアーのシェリング読解』が2014年の出版社目録でも依然刊行準備中とされたこと。つまり、出版の目処が立っていないこと。またシェリングとショーペンハウアーの「生」に対する態度が相反するのだから、ショーペンハウアーの場合、私が求める「自由」概念に反すること。そこで、哲学史の観点からのシェリングとニーチェの関係の研究はひとまず断念しました。シェリングとニーチェとの哲学史からみた関係については、別の研究テーマとして考えることにします。 こうした観点からではなくても、私の考える〈本当の自由〉概念を軸に据えれば、これまで発表した論文を一つにしても一応の統一は保てます。以前に「みずから」と「おのずから」の統一に「自由」を見るという私見を提示しておりますので、それを軸として、これまで発表したシラー、シェリング、ニーチェ、それぞれの自由論を論文集としてまとめること、これが本年度の第二の課題です。
|
次年度の研究費の使用計画 |
購入予定の研究関連書籍が入手できなかったことなどから、次年度使用額が生じました。 平成26年度支払請求額と合わせ、学会参加関係の経費、ならびに研究関連書籍などの購入費として使用したいと思います。
|