研究課題/領域番号 |
24520032
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
吉永 和加 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (20293996)
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キーワード | 他者 / 責任 / 否定神学 / 悲劇的世界観 / レヴィナス / デリダ |
研究概要 |
平成25年度は、「責任論の起源と展開-他者論の宗教的基盤の探求-」の研究計画が当初の予定より少しではあるが進展していること、また平成24年度の研究成果においてレヴィナスとデリダの否定神学的をめぐる言述の基盤を先に確定するべきであるという見解に至ったことを受け、3年目に行うはずであった課題を2年目の課題と逆転させて、「『悲劇的世界観』と責任論」についての研究を行った。 そこでまず、「他者論の形而上学化と否定神学-レヴィナスとデリダのあいだ-」と題した論文において、レヴィナスとデリダの他者論が他性を強調した結果、なぜ形而上学化するのか、という問題を言語という観点から考察した。そして、他者の他性を強調する際にデリダが用いる否定神学的叙述をレヴィナスが否定するという相違はあれ、両者の責任論がある種の親近性をもった宗教的視座に立つことを明らかにした。 次に、「Le fondement religieux du traite sur l'autre : pour la philosophie du comme si」と題した論文において、彼らの宗教的視座がともに、リュシアン・ゴルドマンがパスカルとカントをつなぐ世界観として見出した「悲劇的世界観」特に「comme si(であるかのように)」という内世界的な在り方に連なるものであることを証示した。そのことによって、レヴィナスとデリダが自身では明示しない宗教的基盤を、パスカル、カントにおいて検討する可能性を開いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、前年度の研究が予定よりも早く進展したため、平成26年度に当初予定していた課題「『悲劇的世界観』と責任論」を先に研究した。理由は、その課題が、本研究を総括する際の理論的支柱となることが明らかとなったこと、また研究の総括に必要な時間を鑑み、この課題にこそ余裕をもって取り組みたかったこと、による。 そこで、まず年度の前半には、平成24年度にすでに着手していた他性と否定神学的叙述に関する考察を仕上げた。そして後半には、ゴルドマンの悲劇的世界観という概念を精査し、現代の他者論と近代の宗教論を架橋する基盤を構築した。 予想通り、この課題の研究には時間を要したが、おかげで、平成26年度に「責任の原罪意識」という課題を研究する基盤が作られ、その課題を本研究の総括とする筋道が立てられた。よって、計画は概ね順調に進展していると判断するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、研究計画は、変更したことも含め、当初の目標に向かって順調に遂行されている。今年度は、これまでの研究結果を踏まえ、「責任と原罪意識」という課題を以下のような順序で研究し、本研究課題の総括としたい。 まず、今年度の前半では、パスカルとカントという「悲劇的世界観」で括られる哲学者について、その宗教的見地を探究し、そこから責任概念がいかに出来するのかを検討する。そして、後半では、再びレヴィナスとデリダの責任論へと帰って、そこで論じられている責任論がいかなる宗教的基盤を有しているのか、両者の相違を精査しつつ、明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は研究費を、主として、国内外の研究者との交流、もしくは資料収集のための旅費として使用した。うち、最後の出張(フランス・パリ)は、年度末もぎりぎりになってから(3月20日~3月31日)行ったため、予算がまだ執行されていない。そのため、次年度使用額という見かけ上の繰越金が発生しているが、うち40万円程度は実際には使用され執行を待つばかりとなっている。これは、平成24年の海外出張費が平成25年度に執行されたことと、同じ事情である。 平成26年度も、過年度と同様に、国内外の研究者と広く交流し、また文献を蒐集するために、海外出張および国内出張を行う。これが、上記の昨年度分海外出張費と合わせて、80~90万円程度と思料される。また、新たに出版された参考文献を購入したり、フランス語論文の校正などに、10万円程度が必要になると見込まれる。
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