研究課題/領域番号 |
24520033
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
竹内 綱史 龍谷大学, 経営学部, 講師 (40547014)
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研究分担者 |
関塚 正嗣 諏訪東京理科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00350851)
上野山 晃弘 日本大学, 文理学部, 助教 (00440024)
岡村 俊史 大阪市立大学, 文学研究科, 研究員 (20527733)
五郎丸 仁美 国際基督教大学, 付置研究所, 研究員 (30568845)
鈴木 克成 青森中央学院大学, 経営法学部, 教授 (60279487)
伊藤 貴雄 創価大学, 文学部, 准教授 (70440237)
齋藤 智志 杏林大学, 外国語学部, 教授 (70442019)
高橋 陽一郎 日本大学, 文理学部, 准教授 (80333102)
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キーワード | ニーチェ / ショーペンハウアー / 多元主義 / 普遍主義 |
研究概要 |
2013年8月3日~5日に青森中央学院大学にて、第二回研究会を開催。個人発表3本、ワークショップ、テクスト講読2本を行った。 個人発表は、竹内綱史「宗教問題における普遍主義と多元主義」、上野山晃弘「ショーペンハウアー倫理学と自然哲学」、伊藤貴雄「ショーペンハウアーのコスモポリタニズム」の三本であった。竹内発表は、多宗教の共生という課題に関して、多元主義と普遍主義の利点と問題点を検討した。上野山発表は、大震災をめぐる自然悪と道徳悪の問題に関し、ショーペンハウアー倫理学の意義を論じた。伊藤発表はヘーゲル的なナショナリズムとショーペンハウアー的なコスモポリタニズムの比較を通じて、普遍主義の重要性を論じた。 ワークショップでは、齋藤智志・岡村俊史の両氏からの提題をもとに、普遍主義と多元主義について議論した。「懐疑主義・相対主義・多元主義」と題された齋藤提題は、ディルタイの解釈学をどう理解するかというテーマのもと、多元主義の危うさが論じられた。岡村提題は、「価値の「転換」とパースペクティヴィズム」と題して、「すべての価値の価値転換」と呼ばれる後期ニーチェの企図を、どのような戦略として考えるべきかが検討された。 テクスト講読は、ニーチェとショーペンハウアーの原典をそれぞれ丹念に読む作業を皆で行った。まず、ニーチェに関しては、後期の著作『善悪の彼岸』序文を昨年に引き続き扱った。当該テクストは、ニーチェの認識論および存在論の基礎にあるパースペクティヴィズムを考える上での最重要テクストであり、ニーチェの多元主義が普遍主義とどう関係するのか、相対主義に陥ってはいないのか等についての議論が深められた。ショーペンハウアーに関しては、主著『意志と表象としての世界』第65節前半の、善悪の基準に関する箇所を扱った。普遍主義的と考えられているショーペンハウアー倫理学にある多元主義的な要素が議論となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究グループは当初の研究計画どおり三部門に分けられている。第一部門は理論哲学、第二部門は実践哲学、第三部門は美学である。三年間の研究期間で、一年目は第一部門、二年目は第二部門、三年目は第三部門を主に扱う予定となっている。 今年度は二年目だったわけだが、第二回研究会での個人発表は、竹内発表・上野山発表・伊藤発表のいずれも主に第二部門にかかわる発表であった。ワークショップは多元主義の危うさが主な論点となったが、いかなる形で多元主義的な主張を展開するかについての戦略も議論となった。テクスト講読においてはニーチェのパースペクティヴィズムの中心テクストと、ショーペンハウアー倫理学の核心部分を読んだ。そのテクストの解釈で多くの議論が交わされ、ニーチェ研究者・ショーペンハウアー研究者の間ですら解釈が割れる結果となった。研究会の場では結論を出すまで議論を尽くすことができなかったが、本研究を進めて行く上での各人の立ち位置を批判・反省する良い機会となった。 研究会で様々に重ねられた議論は、各人の研究に組み込まれ、次々と論文等になりつつある(業績表参照)。こうした今年度の活動実績は、ほぼ研究計画どおりに進んでおり、次年度以降の研究にも期待が持てる内容であった。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は本研究課題の最終年度である。定例(年一回)の研究会も開催するが、年度末には総括シンポジウムを行うことになっている。それら中心とし、他の学会・研究会やメーリングリスト等で研究成果の共有を図りつつ、各人が研究を進めるという形で進めて行く。 2014年度の研究会は日本大学文理学部で8月下旬に開催することが決まっており、第三部門を中心とした研究発表・ワークショップ・テクスト講読、および講演会を予定している。年度末には集大成として京都にて講演会ならびにシンポジウムを開催する予定である。 本研究の研究会以外でも、学会や研究会等で本研究グループのメンバーは頻繁に顔を合わせることになる。とりわけ、日本ショーペンハウアー協会の大会(11月)や当協会のニーチェ・セミナー(毎年5月と11月)には、メンバーのほとんどが参加し、メンバー 自身の研究発表はもちろんのこと、それ以外の研究報告をめぐる様々な議論も通じて、互いの研究を検討しあう良い機会となっている。 また、メーリングリスト等、インターネットを通じた情報の共有は常時行っており、文献の情報や最新の研究動向等について、意見交換をしながら、各自研究を進めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展によって、資料収集等の時間的なずれが生じている。総括シンポジウムや報告書の作成に向けて、2013年度より2014年度に回した方が良い場合があった。 本研究グループの構成メンバーは、研究代表者1名(竹内綱史)、研究分担者8名(関塚正嗣・上野山晃弘・岡村俊史・五郎丸仁美・鈴木克成・伊藤貴雄・齋藤智志・高橋陽一郎)、研究協力者2名(本郷朝香・山本恵子)の11名である。(研究協力者2名の分は竹内から支出する形になる。) 次年度は第三回研究会を日本大学にて、総括シンポジウムを龍谷大学にて行うが(それぞれ二泊三日)、メンバー11名にそれぞれ参加のための旅費を配分する。また、資料収集代として、メンバー11名に一人30000円ずつ配分。今年度のメインテーマとなる第三部門の責任者である関塚に100000円、報告書作成責任者である鈴木に50000円、資料収集代および諸経費として配分する。 研究会開催校の高橋と竹内に、開催経費をそれぞれ100000円配分。また、講演会謝金用として高橋に20000円(一名分)、竹内に40000円(二名分)、配分する。
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