研究課題/領域番号 |
24520034
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
金山 万里子 大阪医科大学, 功労教授 (10093189)
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研究分担者 |
金山 弥平 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00192542)
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キーワード | 哲学 / 倫理学 / 西洋古典 / 正義 / 祖国愛 / 友情 / ソクラテス / プラトン |
研究概要 |
昨年度は研究代表者は、ソクラテスがなぜ不敬虔のとがで訴えられることになったのか、その理由を主たる関心として研究を行なったが、今年度は、そこから一歩進み、ソクラテスがなぜ脱獄の勧めを拒否したのかという問題を考察し、その成果を論文にまとめ、その理由を、彼の正義観、祖国愛、同胞愛に求め、そこから、彼が死を選択せざるをえなかった必然性を推定した。 他方、研究分担者は、ソクラテスの探求精神それ自体が、正義の生き方に直結するという点に着目して研究を進め、一方では共同探求を進める力となる恋(エロース)について、他方では、ソクラテスの友人と家族に対するcompassionの感情について考察し、前者はピサ大学での国際学会で発表、後者はオーストラリア、シドニー大学で講演した。これらの講演においても、祖国愛、同胞愛に支えられたソクラテスの哲学の精神が、正義の生き方、および善き生き方を支えるものであること、また彼が、たんに理性を重んじる硬直した思想家ではなく、友人や家族の心情に配慮しつつ、真の意味での善を求める哲学者であったことが強調されている。 翻訳面では、研究代表者は引き続きプラトン『ゴルギアス』の翻訳を行なった。藤沢令夫、さらには加来彰俊による優れた翻訳があるなかでの作業は困難を極めるが、しかし本研究の最終年度の終わりには『ゴルギアス』翻訳が確定していることを目指して鋭意努力している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「(3)やや遅れている」と判断したのは、予定していた翻訳作業の遅れのゆえである。しかし、研究面においては、目的の達成度はかなり高い。 すなわち、代表者は、24年度はソクラテス告発の要因について、25年度はソクラテスの立つ正義の立場と、彼の祖国愛、同胞愛の内実について成果を挙げることができた。 他方、研究分担者においては、『パイドン』に現われたソクラテスの最後の言葉、および『饗宴』のエロース論を取り上げ、ソクラテスの探求を支える友情の問題について、イタリアやオーストラリアで発表し、国際的にも通用する新たな解釈を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、プラトン『ゴルギアス』の翻訳を中心に研究を進めていく。そのなかで、社会的正義と宇宙的正義、幸福の問題にアプローチする新たな視点を得ることができると期待している。 分担者の研究の重点は、現在のところ、翻訳よりむしろ、本研究課題の遂行を通してこれまで得られた独自の知見を示すいくつかの論文の執筆にある。プラトンが共同の哲学探求を強調する意味を、知恵・正義・勇気・節制の四つの重要な徳との関係で明らかにする研究成果を表わしプラトンの探求に関する専門書の完成につなげたいと考えている。 これらの目的に向けて、26年度は米国のカリフォルニア大学バークリー校、およびインドのボンベイ工科大学への出張も計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の旅費、物品費を節約できたためでもあるが、また一つには、研究代表者、分担者ともに、平成26年度、米国とインドへの2回の海外出張(研究打合せ、および研究発表、講演)も計画しており、そのための資金を確保しておく必要があったからである。 「理由」にも掲げたように、インドと米国への出張、研究打合せを通して、さらなる研究の発展のための基礎づくりをしていく予定である。
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