研究課題/領域番号 |
24520040
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武田 時昌 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50179644)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中国哲学 / 中国科学史 / 術数学 |
研究概要 |
先秦方術から中世術数学への展開を明確にするために、(1)放馬灘秦簡、雲夢秦簡、孔坡家漢簡、九店楚簡等の日書、(2)張家山漢簡『蓋廬』、(3)馬王堆漢簡『胎産書』『養生方』などの簡帛資料について読解を試み、中国占術の基礎理論に関する遡及的考察を行った。その結果、孤虚、建除、叢辰等の諸技法および兵法に応用された兵陰陽の占術理論に関する初源的な数理を明らかにし、『五行大義』などの論説と比較することで後世の術数書、科学書との理論的な連続性を考察した。 術数学に関心を有する研究者を集めて日書、張衡『霊憲』、『卜筮元亀』の文献読解ワークショップを行った。また、2012年8月に天地瑞祥志研究会(代表:水口幹記立教大助教)と陽明文庫、大将軍八神社、皆川家文書、京都府立総合資料館若杉家文書等を、2013年2月に北大易占研究グループ(代表:近藤浩之北海道大学准教授)と京大附属図書館清家文庫、春日大社等に合同調査を実施し、研究討論会を開催した。また、彦根市博物館所蔵琴堂文庫の占術関連資料の調査に着手し、全体の半分に相当する約600件の目録データベースを作成した。 術数学に関心を有する国内外の研究グループと連携を深め、(1)第一回Templeton「東アジアの科学と宗教」国際ワークショップ(2012年6月21-23日、ソウル大奎章閣)、(2)術数学国際ワークショップ2013(2013年2月12-14日、京都大学人文科学研究所)、(3)東アジア科学史国際シンポジウム2013(2013年3月8-10日、京都大学人文科学研究所)、(4)術数学東京ミーティング2013(2013年3月18日、大正大学)等の研究集会を主催し、科学史、思想史における術数学的な研究アプローチの目的や意義について提言し、中国、内蒙古、韓国の研究者との国際的な共同研究プロジェクトの立ち上げに向けた体制作りを推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
近年に出土した簡帛資料を用いて、術数学の基礎理論を遡及的に考察することを試みたが、思った以上に後世の術数書との連続性が見出せ、しかも数理的な構造が具体的に把握できた。また、兵陰陽と呼ばれる兵術に応用された占術を検討することで、天地人の三才の道をコンセプトにして術数学的な思想の枠組みが形成され、先秦の占術理論を基盤として術数学が成立していく過程を明確にすることができた。今後さらに諸技法の数理とその展開を考察する必要があるが、唐代以降の兵書が有益な資料であることが判明したことはきわめて有意義であった。 また、科学史、思想史あるいは宗教思想の研究者に積極的に呼びかけ、術数学研究の必要性を提言し、共同研究プロジェクトの立ち上げを実現させることができた。とりわけ、ソウル大の科学史研究グループや北京、上海、内蒙古の科学史研究者と行った国際会議で、科学史研究における術数学的アプローチの目的や意義を口頭発表し、大いに賛同が得られ、国際的な共同研究の体制作りを進展させることができたことは大きな成果であった。2013年9月には、ソウルにて韓国の術数学研究者と国際シンポジウムを共催することも決定し、その準備にとりかかっており、今後の展望も十分に開けており、満足できる一年であったように思われる。
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今後の研究の推進方策 |
先秦方術から術数学が成立していく過程で、漢代思想の役割は検討すべき大きな課題である。2012年度での考察で、天地人の三才の道をめぐる言説が漢代の政治思想のイデオロギーに活用されたことを窺い、一方では後世の農学思想の基本概念になったことを明らかにしたが、2013年度はその考察をさらに深め、漢代の天人感応説が中世、近世の科学思想や占術にどのような作用を発揮したのかを検討し、術数学への変容過程を具体的に追跡する。中心的な考察対象は(1)漢代に流行した災異思想や讖緯思想における科学知識 (2)京氏易を中心とする象数易であり、両者に共通する陰陽五行説を手がかりにして考察する。それらは、漢代だけに限定的に考察される傾向にあった。とりわけ、京氏易に関しては、経学の注釈史では、唐代までの主流であったが、宋代に邵雍の先天易が台頭して廃れてしまうと考えられていた。ところが、近世に流行した断易の基礎理論に取り込まれていることが見逃されてきた。そこで、『卜筮元亀』『断易天機』等を分析し、京氏易、緯学の中世、近世への展開を十分に探るつもりである。 なお、考察に際しては、漢代思想や道教を中心とする専門的な研究者を集めて読解ワーキングを月1回程度開催し、術数学基本文献の読解を試みる。読解のテキストは電子化し、校勘、訳注等の成果を内包させた術数書データベースを作成する。 国内外の研究者との連携を深め、国際的な研究ネットワークの構築を目的として、7月中旬に京都で術数学国際ワークショップ(中国からの招聘学者による特別講演と若手研究者の研究発表)を開催する。また、9月中旬にソウルで韓国術数学会、四川大学の三浦國雄教授の研究グループと合同で術数学シンポジウムを開催する予定である。さらに、後期においても、国内外の研究者を招聘して京都か東京で術数学研究集会を企画したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、9月中旬にソウルで韓国術数学会のメンバーとシンポジウムを行うことになっており、さらに前期と後期に中国の研究者を招聘して術数学国際ワークショップを開催したいと考えている。また、年度末には東京か京都で国内の術数学研究者を集めて研究発表会を企画するつもりである。その調査旅費や会議のための通訳、翻訳の謝金などの諸費用の一部を、旅費、謝金にて支出する予定である。 その他に、旅費は、東京の研究者との読解ワークショップを行うための招聘費あるいは出張費に充当するつもりである。また、謝金として、これまでに作成した術数学関連データベースの整理を行い、Web公開を行うための研究補助のアルバイト雇用費を考えている。その校合作業に伴って、マイクロ複写費が必要である。物品費については、術数学関連図書とプリンター関連、パソコン関連消耗品の購入を予定している。
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