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2013 年度 実施状況報告書

術数学の形成とその思想的基盤

研究課題

研究課題/領域番号 24520040
研究機関京都大学

研究代表者

武田 時昌  京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50179644)

キーワード中国哲学 / 中国科学史 / 術数学 / 中国科学思想史
研究概要

術数学の形成過程と史的展開を明らかにするために、先秦の方術理論を基盤に据え、陰陽五行説を大々的に援用して天人感応的な自然哲学を構築した漢代の思想と占術について多角的な考察を行った。
中世術数学への展開を考えると、最も大きな作用を発揮したものとして、(1)先秦から漢代にかけて盛行した天文律暦学、(2)自然哲学の理論基盤として台頭した象数易、(3)春秋公羊学の災異説を発展させた讖緯思想及び緯書に展開された政治思想という3つ考察対象があることを浮かび上がらせ、それぞれについてとその思想的背景を考察したうえで中世以降の科学思想や占術理論にどのように継承されたかを具体的に検討した。
また、術数学の研究の場がどこにあるのかを明確にするために、中世、近世における薬物療法、とりわけ万能薬として重用された薬剤に着眼し、それが開発され、人々に浸透していく過程を追跡した。その結果、本草学や医術の専門家と道士、僧侶から政府の高官、または在野の知識人とが往来し、交叉する方剤研究の場が形成されていたことを突き止めた。
以上の研究を推進するうえで、放馬灘秦簡『日書』『五行大義』『卜筮元亀』等の読解ワークショップを月1-2回開催し、国内外の研究者と積極的な研究交流を行った。7月に京都で、9月にソウルで大規模なワークショップを開催し、研究発表を行って術数学研究の意義と狙いを大いに提言した。また、2012年6月に行ったソウル大学での国際シンポジウムの成果報告論文集を日韓両国で同時に出版することを計画し、日本語版の編著者として2014年3月に『術数学の射程―東アジア世界の「知」の伝統』を刊行した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の主要な考察対象の1つである中国古代の天文律暦学は、これまであまり総合的に研究されていない領域であったが、中世以降の術数書で唱えられた論説を系統的に整理し、その数理的基盤を遡及的に考察することで、放馬灘秦簡『日書』から『淮南子』天文訓、『漢書』律暦志の間で、大きな五音配当説の置き換えがあることを見出した。そして、『太玄経』『黄帝内経』『抱朴子』で説明される納音の配当原理を分析し、放馬灘秦簡『日書』に見られる所論と比較することで、難解であるとされてきた納音の初源的数理を探り当てることができた。そのことは、術数学の形成における数理的基盤を探るうえで、大きな研究成果であるように思われる。
また、術数学研究を推進する三浦國雄四川大学教授(大阪市大名誉教授)の研究グループと協力して京都やソウルで国際ワークショップを開催し、中国、韓国と日本の研究者と連携した国際研究協力体制を構築することができたことは、術数学の総合的研究プロジェクトの立ち上げにとても有意義であった。

今後の研究の推進方策

最終年度なので、前2年度の研究成果を踏まえて、術数学の形成と思想的基盤の総括的な考察を行う。研究アプローチとしては、中世、近世に成立した主要な術数書に展開された種々の占術理論について遡及的な考察を試み、それらが基盤とする科学知識に数理的な考察を加えることで、術数学の理論構造を明らかにし、先秦の方術が漢代思想のフィルターを経て、中世、近世においてどのように発展してきたかを探る。
『五行大義』『医心方』等に引用された術数学関連の主要文献や書目について、3年間で作成した電子テキストを総合し、横断的に検索できるデータベースを構築し、Web上で公開する。
3年間を通じて研究の総括および研究者ネットワークの構築の締めくくりとして、国内外の学者を集めて、術数学国際ワークショップを開催し、研究成果を発表し、今後の国際的な共同研究プロジェクトの組織化や研究展望を討議する。その会議において、本プロジェクトにおいて結集した研究者が論文や訳注を発表できる場があまりないことを鑑み、術数学の専門的な機関誌の発刊に向けた協議を行うつもりである。

  • 研究成果

    (23件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (14件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] ハレー彗星とクロポトキン―漢方復興の革命児・中山忠直伝(一2014

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 844 ページ: 226-227

  • [雑誌論文] 我が医学戦線異状あり―漢方復興の革命児・中山忠直伝(二)2014

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 845 ページ: 160-162

  • [雑誌論文] 記憶と忘却をめぐる医術2014

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 846 ページ: 162-163

  • [雑誌論文] 科学史研究室デジタル・アーカイブの構築2014

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      東アジア人文情報学研究センター研究年報

      巻: 2013 ページ: 3-10

  • [雑誌論文] 古本草書の復原と中国還流現象2014

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      東アジア人文情報学研究センター研究年報

      巻: 2013 ページ: 25-31

  • [雑誌論文] お雇い外国人の温泉研究とその周辺―東と西の温泉医学(二)2013

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 835 ページ: 206-207

  • [雑誌論文] 近世日本の上方温泉論争―東と西の温泉医学(三)2013

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 836 ページ: 168-170

  • [雑誌論文] 茶の功徳と養生―万能薬の文化史(一)2013

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 837 ページ: 164-165

  • [雑誌論文] ケシ坊主の甘い誘惑―万能薬の文化史(二)2013

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 838 ページ: 172-173

  • [雑誌論文] 東洋のテリアカを捜せ―万能薬の文化史(三)2013

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 839 ページ: 190-191

  • [雑誌論文] 検校になった人々―鍼按師の原像2013

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 840 ページ: 164-165

  • [雑誌論文] 二日灸と月見鍼2013

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 841 ページ: 174-175

  • [雑誌論文] 漢城・ソウルの良医に出会う2013

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 842 ページ: 186-187

  • [雑誌論文] 『医心方』を伝える―医療文化史サロン展二〇一三を終えて2013

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 雑誌名

      医道の日本

      巻: 843 ページ: 174-175

  • [学会発表] 明末清初の象数学研究

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 学会等名
      術数学国際ワークショップ2013-7「術数学と宗教文化」
    • 発表場所
      京都大学人文科学研究所分館大会議室
  • [学会発表] 東アジアの万能薬―近世方剤学の術数学的要素

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 学会等名
      日韓術数学シンポジウム「東アジアにおける術数学への多角的アプローチ」
    • 発表場所
      円光デジタル大学ソウルキャンパス
  • [学会発表] 鍼灸師論―名医、良医の歩んできた道

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 学会等名
      第41回日本伝統鍼灸学会学術大会
    • 発表場所
      京都エミナース
    • 招待講演
  • [学会発表] 東アジアの万能薬とその治療法

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 学会等名
      京都府医師会・医学史研究会学術講演会
    • 発表場所
      京都府医師会館
    • 招待講演
  • [学会発表] 納音数理考

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 学会等名
      術数学東京ミーティング2014
    • 発表場所
      大正大学巣鴨校舎5号館
  • [学会発表] 近代日本の食養生

    • 著者名/発表者名
      武田 時昌
    • 学会等名
      第二回飲食文化研究会
    • 発表場所
      国際基督教大学国際会議室
    • 招待講演
  • [図書] 天地人 三才の世界2014

    • 著者名/発表者名
      尾池和夫・竹本修三編(25名による共著)
    • 総ページ数
      503
    • 出版者
      マニュアルハウス
  • [図書] 『術数学の射程―東アジア世界の「知」の伝統』2014

    • 著者名/発表者名
      武田時昌編著(16名による共著)
    • 総ページ数
      231
    • 出版者
      京都大学人文科学研究所
  • [備考] 科学史研究室所蔵資料データベース

    • URL

      http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~takeda/

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公開日: 2015-05-28  

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