研究課題/領域番号 |
24520041
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
鶴成 久章 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20294845)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 明代 / 科挙 / 郷試 / 会試 |
研究概要 |
『明代登科録彙編』『天一閣明代科挙録選刊』『中国科挙録匯編』その他個別に収集した明代の「会試録」に基づいて、明代に行われた全89回分の会試の第一場(「四書義」「五経義」)、第二場(「論」「詔・誥・表」「判」)、第三場(「策」)の出題内容を整理し分析した。なお、万暦末から崇禎年間の時期の「会試録」は残存しているものが非常に少ないため、今年度はこの時期の「会試録」を所蔵する海外の機関をできるだけ多く訪問し調査する計画であったが、予定していた一部の機関の調査が未完である。しかしながら、第一場の「五経義」の出題の分析に際しては、種々の「八股文」の撰集(『皇明程墨紀年四科郷会程墨紀年』『歴科程墨文室』他)や『制義叢話』等の二次的資料を使用し、ほぼ期待した成果を得ることができた。第二場の「論」「詔・誥・表」と第三場の「策」についても、「会試録」が残っていない科については、考試官を務めた人物の別集に収録された資料、『皇明郷会試二三場程文選』『群書備考・続二三場群書備考』等の挙業書を二次的資料として活用し分析を行うことで所期の目的を達成することができた。 今年度の研究により、明代中期頃までの「四書義」「五経義」「論」「策」の出題内容が従来の明代思想史研究によって解明されている思想史の展開と密接に連動していることを跡づけることができた。また、今年度の研究により、次年度以降に行う予定の郷試の出題内容と各地域の思想史の展開との関係についての分析を行うための基本データが整ったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の基本計画である、明代会試の全三場の出題内容を予定通り整理し分析することができた。しかしながら、計画していた中国国内の漢籍所蔵機関(南京図書館、中国国家図書館、吉林大学図書館)での文献調査が未完であるため、今後継続して行う必要がある。また、今年度は諸事情により招聘がなく、「科挙制与科挙学国際学術研討会」にも参加ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、郷試に関する考察を行うことになる。但し、会試に比べて対象となる資料の量が四倍以上になることから、次年度は第一場、第二場に限定して分析を行うこととする。具体的な研究の方法は、今年度に実施済みの会試の出題の分析データを参照しながら、会試の南巻、北巻、中巻の地域区分ごとに、各科の会試の前年に行われた郷試全90回分の第一場、第二場の出題内容を分析し、郷試の出題が翌年の会試の出題に影響を与えているのか否か、与えているとすればそれはどういう観点であるのかという点について考察する。また、郷試の出題の観点が二年前の会試の出題の影響をどの程度受けているのかについても考察する。さらに、郷試の出題には、その地域(省)の思想史的伝統や思想風土に根ざしたその地域に特有の思想的テーマ(地域の先賢・思想家の存在など)を意識した内容がどの程度含まれていたのかという点についても、地域ごとに分析・考察する。 おおよそのタイムスケジュールとして、南巻分の分析を次年度の8月末までに、北巻分を12月末までに、中巻分を年度末までに行う予定である。 なお、今年度は、明代「登科録」を所蔵する海外の機関において積極的に調査を行い、「科挙制与科挙学国際学術研討会」はじめ海外の学会で成果を発表したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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