研究課題/領域番号 |
24520044
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
恩田 裕正 東海大学, 清水教養教育センター, 教授 (70307297)
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研究分担者 |
伊東 貴之 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (20251499)
林 文孝 立教大学, 文学部, 教授 (60263745)
松下 道信 皇學館大学, 文学部, 准教授 (90454454)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中国哲学 / 朱子学 / 朱子語類 / 心身 / 仁 |
研究概要 |
平成24年度は、研究対象である『朱子語類』巻4~6「性理篇」のうち、巻4の訳注作成を進めた。訳文初稿としてまとまったのは、予定した分量のまだ四分の一程度に止まるが、詳細な注の作成や精確な読解に必要不可欠な関連分野の調査・研究については、後述の通り一定の成果が得られている。 『朱子語類』の口語語彙や他の巻との関係についての調査・研究においては、恩田・伊東・林が参加する宋明研究会での巻20~21の輪読、恩田による巻8・94の訳注作成を通して、本研究遂行に必要な一定の知見が得られた。特に、宋明研究会の輪読では、『論語』学而篇に見える「仁」概念に関する朱熹の議論について検討を加えることができた。 朱子学における「仁」などの主要概念やその中国近世思想史上の位置づけについては、伊東が勤務する国際日本文化研究センターで主宰している共同研究会「「心身/身心」と「環境」の哲学―東アジアの伝統的概念の再検討とその普遍化の試み―」における、関連諸分野の研究者による発表と討論に、研究代表・分担者全員が参加することなどを通して、その再検討を行うことができた。この共同研究会では、平成24年7月に林が訳注分担部分の主題に関連する研究報告を行い、その成果を論文として発表している。 朱子学やその主要概念の展開と同時代の道教との関わりについては、松下が『道蔵』及び『道蔵輯要』を中心に網羅的に調査を行い、一定の知見が得られた。その成果は、平成24年8月の宋代史研究会において松下によって発表されている。 このように調査・研究・再検討を進めたことによって、巻4の訳注作成に必要な、『朱子語類』に見えるいくつかの口語語彙の意味を明らかにすることができ、朱子学における「仁」などの主要概念について、中国近世思想史上の位置づけや同時代の道教との関わり、他の巻での朱熹の説明との関係について一定の知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、『朱子語類』巻4~6「性理篇」について、そこで用いられている口語語彙に関する詳細な分析に基づき、『四書集注』や『朱文公文集』等の朱熹の他の著述や同時代の道教文献との比較検討をふまえて精確な読解を行うことで詳細な訳注を作成し、これにより、朱子学の「仁」概念について、自然・環境の中での心と生身の肉体・身体との関わりにおけるその特質を明らかにすることを目的としており、平成24年度には『朱子語類』巻4の読解と訳注稿の作成を計画していた。そして、当初計画では、平成25年2月末に巻4の公刊訳注原稿を完成させる予定であった。 平成24年度には、訳注稿、特に詳細な注釈の作成の前提となるため、まず『朱子語類』他巻の口語語彙の用例研究、朱熹の他の著述及び同時代の儒学や道教の文献との比較研究、そうした研究を通した中国近世思想史上での朱子学の「仁」概念の再検討の作業から着手し、研究計画で取り決めた役割分担に基づいて研究を進めた。その結果、巻4各条の訳注稿を作成するために必要な一定の知見が、それぞれの研究分担部分において得られており、巻4の訳注初稿の作成の準備はできているといえる。ただし、同年度末の時点では、訳文の作成という具体的なかたちにまとめられた部分はいまだ全体の四分の一程度にすぎず、かつその訳文も全員での検討や修訂作業を行うまでには至らず、成果としてはまだ初歩的な段階に止まっているのが現状である。しかし、平成25年度内での巻4訳注作成作業完了の見通しはあり、当初計画でもその公刊は平成24~25年度を予定していたことから、若干の遅れはあるが、研究に一定の進展があったものと認められる。 したがって、本研究の「現在までの達成度」は、「(3)やや遅れている」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が、朱子学の「仁」概念について、自然・環境の中での心と生身の肉体・身体との関わりにおけるその特質を明らかにすることを目的とすることはこれまでと同様である。同時に、その具体的な方策として、『朱子語類』巻4~6「性理篇」を対象とし、そこで用いられている口語語彙に関する詳細な分析に基づき、『四書集注』や『朱文公文集』等の朱熹の他の著述や同時代の道教文献との比較検討をふまえて精確な読解を行うことで詳細な訳注を作成する方法を取ることも変更せず、今後も当初の研究計画に示した方策で研究を推進する計画である。したがって、『朱子語類』他巻、朱熹の著作、及び同時代の儒学や道教などの思想についての研究を遂行するため、関係資料・書籍の調査、収集、購入は、平成25年度以降も継続して実施する予定である。 ただし、『朱子語類』における用例研究や他巻の訳注作成を通して、同書でよく使われる口語語彙の意味・用法の決定を行う作業や、朱熹の他の著述及び同時代の儒学や道教の文献との比較研究による、朱子学の「仁」概念の再検討や中国近世思想史上での再定位に、計画以上の時間がかかっており、これまでの研究成果を、『朱子語類』の訳注という具体的なかたちに結実できていないので、平成25年度からは、これまでの研究成果を反映した訳文・注釈の作成に特に注力し、公刊できる訳注稿の作成を研究推進の方策の柱とする。 具体的には、研究代表・分担者が割り当てられた巻4の分担箇所の訳注初稿を平成25年8月頃までに提出し、全員でその初稿に検討を加え、その後数回の研究集会を開いて修訂・補筆を行い、平成25年度内に巻4全体の公刊訳注原稿を完成させ、研究代表・分担者の所属機関の紀要あるいは学術雑誌に投稿する予定である。巻4の公刊訳注原稿の完成後には、巻5・6についても、すみやかに同様の方策で研究を推進する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額(B-A)」が\920となったのは、収集資料の状況から資料整理用品の購入を控えたためであり、これについては平成25年度の助成金とあわせて、後述の平成25年度に実施する資料調査に必要な資料整理用品の購入にあてる計画である。 本研究では、『朱子語類』を主要な対象とするが、同書と同時代の儒学・道教の文献との比較研究、中国近世思想史上における「仁」を中心とした朱子学の基本概念についての再検討を行うため、原典資料の影印本・排印本や、中国哲学、近世思想、中国史など関する研究書を平成25年度も購入する予定だが、この費用に研究費を使用することを計画している。 次に、研究及び訳注作成に必要な『朱子語類』の各種版本をはじめとする原典資料については、朱子学、道教関係文献を多数所蔵する東京大・京都大・九州大などで調査を行う予定であり、また、『朱子語類』の訳注初稿の検討・修訂、公刊原稿の作成のために、研究代表者の恩田が勤務する東海大学・清水校舎などで研究集会を予定している。こうした調査・集会を実施するための旅費に研究費を使用することを計画している。また、こうした調査・集会にあたっては、調査結果や訳注原稿のデータの整理・保存が必要となるが、それに用いるための資料整理用品や記録媒体の購入に研究費を使用することを計画している。 最後に、平成25年度には、『朱子語類』巻4の訳注を、研究代表・分担者の所属機関の紀要あるいは学術雑誌に発表する予定であるので、その論文投稿料として研究費を使用すること計画している。
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