研究課題/領域番号 |
24520045
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
青木 隆 日本大学, 文理学部, 教授 (20349947)
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研究分担者 |
仁子 寿晴 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, その他 (10376519)
黒岩 高 武蔵大学, 人文学部, 教授 (60409365)
矢島 洋一 奈良女子大学, その他部局等, 准教授 (60410990)
佐藤 実 大妻女子大学, 比較文化学部, 准教授 (70447671)
中西 竜也 京都大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40636784)
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キーワード | 中国思想 / イスラーム思想 / 中国イスラーム思想 / 回族思想 |
研究概要 |
平成25年度は、研究討論会を合計28回開催し、延べ約200時間以上にわたり、主として『天方性理』巻三の「概言」・「人生原始図説」・「胚胎初化図説」・「四本分著図説」・「表裏分形図説」・「内外體竅図説」を対象とし、各研究分担者の選考各方面から徹底的に討議を行った。その結果、以下のような成果を得た。 (1)昨年度から引き続き、「天人授受」、「小世界」「精微」、「実有」、「象」、「性情」、「温養」、「飛揚」、「表裏」、「霊明」などの語につき、近世中国思想におけるこれらの語の意味用法の歴史を明らかにし、劉智の用法との比較を行った。今回、劉智が神の存在を「実有」の語で表すのに対し、ほかの中国ムスリム知識人たちの著作では実有の語を用いず、「原有」の語を用いることがわかった。また、近世の中国思想では、人体のことを「小天地」という語で称することが多いが、中国ムスリム知識人たちはこの語を用いない。。王岱輿は「小天地」という語で人体を称する中国思想を罵倒しており、忌避すべきものととらえていることがとりわけ注目される。劉智が「小天地」に類似した「小世界」の語を用いること、しかしほかのムスリム知識人がこの語を用いないこととあわせてみると、非常に興味深い。 (2)四本分著図説から表裏分形図説への展開から四元素の運動の意義を読み解くことによって、大世界と小世界の生成の諸段階でいたるところにみられる逆方向の四元素の運動の逆転構造が、世界の創造の説明原理となっているとともに、一方で大世界と小世界の別を明確化する働きがあることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度に『天方性理』巻三前半の諸図説、即ち「概言」、「人生元始図説」、「胚胎初化図説」、「四本分著図説」、「表裏分形図説」の訳注を完成させる予定であった。現状では、「小世界」、「性情」、「実有」、「一念之動」の語釈、「概言」解説、「表裏分形図説」解説が未完成であるため、予定の研究計画の遂行に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度より、研究討論集会の開催回数を年間ベースでそれ以前の2倍の回数を確保しているため、これ以上の開催回数の増加は望めない。すでに文献解読の方法は確立した段階にまで洗練されているので、今後は、この開催回数を維持しつつ、一回の研究討論集会でより効率よく討議を進め、より効率よく研究成果を整理し発表できる形に加工してゆくことが課題である。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)研究成果発表として、『天方性理』巻三訳注その他の論文を雑誌『中国伊斯蘭思想研究』に掲載して印刷刊行する予定であったが、昨年度内に実際に印刷刊行するに至らなかったため。 (2)現地調査を予定していたが、予備調査の結果が思わしくなかったため、昨年度内の現地調査を中止したため。 (1)雑誌『中国伊斯蘭思想研究』を印刷刊行する。 (2)資料収集計画を練り直し、次年度予算とあわせて中国イスラーム関連資料の購入にあてる。
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