研究課題/領域番号 |
24520052
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
畝部 俊也 名古屋大学, 文学研究科, 准教授 (10362211)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流(タイ・イギリス) / タイ仏教 / 紙折装飾写本(サムット・コーイ) / 貝葉写本 / パーリ語蔵外仏典 |
研究概要 |
本年度は、2013年2月にイギリス、ロンドンの大英図書館およびアイルランド、ダブリンのチェスター・ビーティー図書館においてタイの紙折装飾写本の調査を実施した。 大英図書館のタイの紙折写本の所蔵数は世界的に見ても群を抜いているが、前プロジェクトでの調査を受け、今回の調査を以て、その全貌を把握することができた。本プロジェクトの主たる研究対象であるオックスフォード大所蔵のBODL. MS. Pali a. 27(R) について、テキスト面について比較考察対象とし得る諸写本を選定できた。また、チェスター・ビーティー図書館では、図像面で比較対象となる仏伝挿絵を含む貴重な写本を2本調査した。 3月にはタイのチュラロンコーン大学、タイ研究センターにてこれまでの研究の成果を発表し、現地の多くの研究者と意見を交換した。バンコク、トンブリの寺院壁画の調査も行った。 BODL. MS. Pali a. 27(R) 所収の各テキストに関しては、ローマ字転写を作成し、おおまかな内容分析をおこなった。翌年度以降の本格的なテキスト校訂に向け、調査によって得られた基礎資料の整理を行った。 他にも蔵外仏典である『パンニャーサ・ジャータカ』を主たる研究資料とした日本語論文2本を『パーリ学仏教学』26および『名古屋大学文学部研究論集』哲学59に発表した。 なお、今年度に予定されていたBODL. MS. Pali a. 27(R) の図像面の研究書Illuminating the Life of the Buddha (Naomi Appleton, Sarah Shawと共著、オックスフォード大ボードリアン図書館刊)の出版は出版社の事情により2013年6月出版となったが、原稿は完成させ、既に校正まで終了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイの装飾写本等に基づいてパーリ語の蔵外仏典を研究する本プロジェクトであるが、今年度は、主資料たるBODL. MS. Pali a. 27(R)写本に含まれる諸テキストのローマナイズ資料を作成し、その対照のための諸資料を収集し、ローマナイズ資料も作成できた。次年度以降の本格的な校訂・翻訳研究の準備はおおむね整えることができたと言える。 なお、当初の計画では調査はまずフランスから開始する予定であったところ、新資料が見つかり、また、大英図書館、チェスター・ビーティー図書館とも先方のキュレーターの協力を得られることになったために調査先を変更することになった。しかしながら、結果として大きな成果を得られたと考える。また、都合により、予定していた国内の調査が遂行できていないが、これについては今後の2年の間に充分実施可能である。個人で行う文献研究の面は論文2本を成果として公表するなど順調に進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
資料調査として、アメリカのウォルターズ美術博物館(ボルチモア)での調査を行い、同時にペンシルヴァニア大を訪ね、ジャスティン・マクダニエル准教授の協力により研究を進捗させる予定である。初年度に引き続きタイにも渡航し、文献研究の成果と、タイの現地研究者(フランス極東学院ピーター・スキリング講師など)や僧侶(ワット・ポー寺院マライ長老など)の理解との比較検討を行い、それら文献について現在のタイ仏教文化に繋がるものとして研究を進める。 文献研究面では、初年度に作成したローマ字転写に、順次収集した資料に基づく異読情報などを加え、最終年度の本格的なテキスト作成に向けての準備としたい。文献の内容としては広く北伝仏教圏の諸仏典とも関係しているため、そのテキスト内容の包括的な研究を目指し、関係する文献を研究する研究協力者を講師に招き、2~3日にわたる研究会を夏、冬2度に渡って開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画に基づき物品費を250,000、旅費を700,000、人件費・謝金を450,000、その他を100,000計上(単位円)している。旅費は国内学会での研究成果発表に加え、アメリカでの調査、研修を計画しているため、本年度使用分とほぼ同額となっている。物品費も本年度使用分並である。人件費などは、写本のローマ字転写作業、データ整理などに充てるが、本年度予定額ほど使用できなかったため、次年度はさらに積極的に活用する予定である。
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