研究課題/領域番号 |
24520054
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡野 潔 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (80221844)
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キーワード | インド仏教 / ネパール仏教 / サンスクリット語文献 |
研究概要 |
本研究課題は、平成24年4月の交付申請書に記したように、4年間で次の (1) ~ (3) の三種類のテクストの研究を並行して行うことを目的とする:(1) 『如来出生アヴァダーナマーラー』(略号 TJAM); (2) 『善説語・大ラトナ・アヴァダーナマーラー』(略号 SMRAM); (3) 『菩薩のアヴァダーナの如意鬘』(略号 BAKL)。 研究期間の2年目の平成25年度の研究は予定どおりに進捗し、以下のような成果として、発表がなされた。 上記の (1) の研究: 2本の論文を平成25年度に発表した。まず『南アジア古典学』第8号(2013年7月)の論文第三部において、TJAM の第8章『菩薩誕生品』の梵文校定テクストと和訳を発表した。次に、『印度学佛教学研究』62巻1号(2013年12月)において TJAM の現行テクストの成立年代を考察した論文を発表した。その論文では他のネパール成立の梵文仏伝文献『バドラカルパ・アヴァダーナ』と『サンバドラカルパ・アヴァダーナ・マーラー』との関係・成立順序も考察した。 上記の (2) の研究: SMRAM 第17章『大神通餓鬼女アヴァダーナ』の梵文校定テクストと和訳を、『南アジア古典学』第8号の論文第二部において発表した。そこでは『アヴァダーナシャタカ』第46章『ウッタラ』も全訳し、両テクストの比較を行った。 上記の (3) の研究: BAKLの第82章『まず先に地獄に生まれる者アヴァダーナ』の梵文と蔵訳の校定ならびに和訳と研究を、『南アジア古典学』第8号の論文第一部において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の(1)~(3)のテクストについて、平成25年4月に平成25年度の予定として報告した研究計画は、25年度中に完全に達成された。またその25年度の計画にはなかった、ネパールの3種の仏伝文献の相互関係を調査した『印度学佛教学研究』62巻1号の論文も、業績に追加できた。 平成24年度からスタートして、現時点で2年間が経過したが、各年度に立てた計画は完全に達成されている。この2年間の成果をまとめると次の通り: (1)の TJAM については第8章の校定・翻訳が発表された。またTJAMを含む3種類のネパール成立の仏伝avadAnamAlAの関係と成立年代を考察する論文を出した。 (2)の SMRAM については第16章 PretikAvadAna と、第17章の PretIbhUtamaharddhikAvadAna の校定・翻訳が発表された。 (3)の BAKL については第80章 SubhadrAvadAnaと第81章 HetUttamAvadAnaと第82章 NArakapUrvikAvadAna の校定・翻訳が発表された。
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今後の研究の推進方策 |
2年前(平成24年度初め)に立てた本研究課題の推進方策について、基本的な路線変更は無いが、種々の状況の変化に応じて平成26年度は次のような研究計画を立てている。 (1)の TJAM については第1章の校定・翻訳を行い、発表する。第3章の校定・翻訳も進めるが、第1章を優先させる。 (2)の SMRAM については二つの章の校定・翻訳を同時に発表する。すなわち第34章 VirUpAvadAna と、第35章の PadmAkSAvadAna の校定・翻訳を発表する。これまで餓鬼説話を中心に校定を進めてきたが、この2年間で SMRAM の重要な餓鬼説話の校定が終わったので、今後はそれ以外の説話にも研究を拡げてゆくことになる。 (3)の BAKL については第83章の校定・翻訳の準備を進める。なおこの BAKL のテクストについてはこれまでドイツの Michael Hahn 教授夫妻に私の校定原稿の最終チェックを依頼して、校定や翻訳の精度を可能なかぎり高める努力をしてきた経緯があるが、最近 Hahn 教授が重い病気に罹られているため、健康の恢復を待ち、状況に応じて研究の進め方を調整する予定である。
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