研究課題/領域番号 |
24520055
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本橋学館大学 |
研究代表者 |
杉木 恒彦 日本橋学館大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40422349)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インド密教 |
研究概要 |
本研究課題の目的は、10世紀頃編纂の仏教経典『ヴァジュラダーカ・タントラ』の主要な章のサンスクリット語校訂テキストならびに英文解説・訳注作成である。平成24年度には、(1)インド・ネパールに赴いて(海外旅費使用)写本の複写や(テキスト解説に有用となる)遺跡物の写真資料といった研究遂行に必要な一次資料を収集し、(2)市販書籍など、インターネット等で国内にて入手可能な二次資料については国内にて収集を進めた(設備備品費使用:ここで「設備備品費」としたのは、所属機関の規定により原則全ての書籍は設備備品扱いとなるため)。収集できた資料群をもとに、関連資料の検討から本丸である『ヴァジュラダーカ・タントラ』主要章のテキストの校訂作業を進めつつ、解説等の英文作成にも同時に着手した。関連資料の検討としては、『ヴァジュラダーカ・タントラ』中に多くの類似文章を見いだせる後期密教の初期の文献群(とりわけ苫米地徹氏校訂(仮版)の『タットヴァシッディ』のサンスクリット語テキスト、ならびに私自分が作成している『チャクラサンヴァラ・タントラ』の注釈書2点の仮校訂テキストの再検討と精緻化)ならびに(さらにそこに説かれる思想・実践の古い形を説く)中期密教文献群(とりわけ『大日経』『蘇婆呼童子請問経』の西蔵語テキスト[サンスクリット語写本は現存しない])の調査を特に集中的に行った。 研究課題遂行に必要な資料群をできる限り24年度中に入手するという当初の目的を果たすことはおおむねできたと思っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】で述べたように、24年度は、(1)インド・ネパールに赴いて写本の複写等研究に必要な資料を収集し、(2)市販書籍など、インターネット等で国内にて入手可能な必要資料については国内にて収集を進めた。(1)については、インド・コルカタのRoyal Asiatic Society所蔵の必要写本3点の複写(マイクロフィルム)を入手できなかった(:許可を得られなかったため)。そのため、25年度、現物を現地で書写するという方法(海外旅費使用)で、資料収集を一部継続させたい。一方、(2)については順調に収集できた。 完全ではないが収集できた資料群をもとに、テキストの校訂作業を進めつつ、解説等の英文作成も同時に進めた。当初、24年度中に謝金を使用してその英文をネイティヴ研究者にチェックしてもらう予定であった。だが、主として資料入手に関する上述の理由に起因する作業の遅延から、これを25年度に行うことにした。そのため24年度に予定していた謝金の支出を行わず、代わりに25年度の物品費の一部を使用して25年度購入予定の書籍の一部を前倒しで購入し、それら書籍の購読・検討を前倒しで行った。 スケジュールに多少の前後は生じたものの、全体としては、おおむね当初の予定(研究課題遂行に必要な資料群をできる限り24年度中に入手する)を遂行することはおおむねできたと感じている。このような理由から、「おおおむね順調に進行している」と報告したい。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画には記さなかったが、25年度も、引き続きインド出張を行いたい。なぜなら、【現在までの達成度】に記したように、24年度にその複写を入手できなかったインド・コルカタRoyal Asiatic Society所蔵の必要写本3点のデータを、25年度、現物を現地で書写するという方法(海外旅費使用)で収集したいからである。この出張は研究遂行上きわめて必要である。申請時の研究計画では25年度の海外出張旅費をドイツ(ハンブルグ)出張にあてる予定であったが、海外出張旅費の多くを緊急度の高いインド出張に割り当てたい。(その場合、ドイツ出張を26年度に集中的に実施するという方針に変更することも視野に入れている。)インド出張により、研究課題遂行に必要な一次資料の収集を完遂したい。 一次資料の完全収集により、テキスト校訂・解説作成・訳注作成を精緻化させていきたい。英文で作成した部分はネイティヴにチェックしてもらい、成果の一部を国内の学会等で発表し、さらに26年度の国際学会(International Association of Buddhist Studies)への申し込みと報告内容の準備へとつなげていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
写本調査のために、6月(1週間)と8月(2週間)にインド(コルカタ)に出張する(外国旅費使用:双方合わせて計30万円)。『ヴァジュラダーカ・タントラ』の内容解説等(論文や口頭発表の原稿も含む)の英文校閲(ネイティヴ・チェック)のために、謝金(30万円)を使用する。書籍等資料購入のために設備備品費を使用する(20万円)。その他、用紙などの消耗品の購入のために消耗品費(10万円)を使用する。
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