研究課題/領域番号 |
24520055
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研究機関 | 日本橋学館大学 |
研究代表者 |
杉木 恒彦 日本橋学館大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40422349)
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キーワード | ヴァジュラダーカ・タントラ / インド仏教 / インド密教 / タントラ |
研究概要 |
本研究は、インド密教経典(仏教のタントラ)『ヴァジュラダーカ・タントラ』の主要な章のサンスクリット語校訂テキストを作成することを目的とする。この目的遂行のため、平成25年度の6月と8月にそれぞれ1~2週間ほど当該サンスクリット語写本の1つを所蔵するインド(コルカタ)のRoyal Asiatic Societyを訪問し、当地での写本の調査(現物の閲覧)に加えて、その他関連するタントラの伝統の現地調査(グワーハーティ)も補足的に行った(旅費使用)。さらに、ネパール(カトマンドゥ)のNational Archivesから、研究遂行に必要ないくつかの写本のうち現存のマイクロフィルムでは不鮮明な箇所のあるもの(『ヴァジュラダーカ・タントラ』と強い関連をもつカンバラ作『ヘールカアビダーナという成就法の宝庫の注釈』など)について、現地のスタッフに再度オリジナルの写本のデジタル撮影をしてもらい、送付してもらった(設備費[書籍費]使用)。研究環境をより一層充実させることができた。 このようにして得た資料の調査を進め、その成果の一部を、国内研究紀要への研究ノート[2万字程度:既刊]ならびにオランダの仏教関連百科事典のタントラの項の記事[5000word程度:校閲中]に反映させることができた。また、関連の強い『ヴァジュラダーカ・タントラ』第42章との比較検討を加えた、上述『ヘールカアビダーナという成就法の宝庫の注釈』の第1章のサンスクリット語(ならびにチベット語訳)校訂テキストを発表に向けてほぼ完成しており、現在英語論文の形に体裁を整えている最中である。 なお、2度の海外出張が予想を超えて安価にできたこと、またネイティヴチェック(謝金使用)を要する英語論文の発表が上述のように平成26年度にずれ込んだことにより、研究資金の一部を平成26年度に繰り越すことにした。有意義に使用したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述「研究実績の概要」に記したように、ネイティヴチェックも含めて英語論文を年度内に完成させたかったが、若干26年度にずれ込むことになった。本研究の目的は『ヴァジュラダーカ・タントラ』の校訂テキスト作成であるが、パラレルな文章をはじめ当該タントラと関連の深いカンバラ作『ヘールカアビダーナという成就法の宝庫の注釈』の校訂テキストも同時に整備していくのが、単に校訂の精度を上げるための効率という観点からだけでなく、インド初期中世期の仏教タントラの在り様をより明確にするうえで有意義と考えるようになった。このように、カンバラ作『ヘールカアビダーナという成就法の宝庫の注釈』の校訂テキスト整備も視野に入れるという、やるべきことが良い形で増えたことが、若干であるが作業が26年度にずれ込んだ理由である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、『ヴァジュラダーカ・タントラ』の主要章に加え、『ヘールカアビダーナという成就法の宝庫の注釈』全体の校訂テキスト作成を同時に進めていく。この微修正以外は、申請時の研究計画に沿って研究を進めていく見込みである。具体的には、研究成果の一部を、上述「研究実績の概要」「現在までの達成度」で言及した論文の他に、オーストリア(ウィーン)で8月に開催される第17回国際仏教学会(XVIIth Congress of the International Association of Buddhist Studies)で発表予定である(旅費使用)。その他、機会を見ながら可能な範囲で成果発表をしていきたい。また、春休みを利用してドイツのハンブルグ大学へ出張し、現地の専門家の方々と議論をしながら校訂の精度を上げていく(旅費使用)。これらの作業の過程で生じる英文チェックのために、英語のネイティヴ研究者に対し謝金を使用する。26年度中に、『ヴァジュラダーカ・タントラ』の主要章と『ヘールカアビダーナという成就法の宝庫の注釈』全体の校訂テキスト作成をひとまず完成させ、27年度は細部の精度を上げることに専念できるようにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度繰越金が発生した理由は、以下の2点である。まず、「研究実績の概要」欄に記した通り、2度の海外調査の費用(旅費)を当初の予想を大きく超えて安価に実施することができたことである。もう1つは、同じく「研究実績の概要」欄に述べた研究範囲の若干の拡大にともない、本年度使用していた英文ネイティヴチェック(謝金使用)の実施が次年度にずれ込んだことである。 旅費を、8月にウィーン(オーストリア)で開催される国際仏教学会会議(8月18日~8月23日)での研究発表(8月19日)の旅費、ならびにハンブルク大学への出張旅費に有効活用する。また、次年度から研究成果の英文でのアウトプット(論文)の面を強めていくことから、ネイティヴチェックに要する費用(謝金)が上昇する。上記「理由」に記した通り、繰越金の一部もこの謝金に使われる。
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