本研究は「梵語および梵語・ネワール語混成の写本から見るネパール仏教の特徴について」をテーマとし、ネパールにおける現地調査と梵語および梵語・ネワール語混成の写本の解読を通して、インドから直接伝播してきた「ネパール仏教」の特徴を明らかにすることを目的としている。その成果の一部を国内外の学会にて発表し、研究雑誌などに論文も掲載をしてきた。 当該科研最終年度は、文献研究として、これまで進めてきたネパール仏教の特徴を知る上で最も重要な文献と見なされている『スヴァヤンブー・プラーナ』をはじめとし『阿闍梨作法集』など梵語および梵語・ネワール語混成の関連資料の精読をし、その内容考察を進めてきた。さらに、梵語・ネワール語混成写本の研究は始まったばかりであるため、それら写本を今後研究資料として使用できように、「梵語・ネワール語混成写本研究の覚書」の作成も進めており、それ公開する予定である。 2015年には4月25日及び5月12日の二回にわたって発生したネパール大震災により調査対象としてきた写本の所有者たちも被害を受けてしまい、ネパールにおける現地調査を中止せざるを得なかった。先般の大震災により人的な被害と共に、文化財も倒壊した。これまでの現地調査で撮影した写真等が今後の復興にも役立つことになろう。その中、2016年3月に一部であるが、個人所蔵の写本の調査を開始した。本研究はネパール現存の写本を調査するだけではなく、収集した資料の分析によりネパール仏教の特徴を見出すことであり、その成果を今後公開していく。
|