研究課題
本研究プロジェクトの最終年度にあたり、ジネーンドラブッディの『集量論複注』第4章・第6章の梵語写本からの批判的校訂を終えた。第4章に関しては、その和訳と英訳、第6章に関しては和訳も並行して完成した。さらに、同書の注釈対象であるディグナーガの『集量論』第4章・第6章の梵語テキストの再構成とそれにもとづく和訳、第4章に関しては英訳も完成した。したがって、所期の目的は達成することができた。さらに第6章に関しては、ライプチッヒ大学の室屋氏の助けを借りて、同章のメインテーマである「誤った論難」(過類、ジャーティ)について、ディグナーガの先行する論理学書『因明正理門論』の該当部分との綿密な対照表を作成した。これは、梵語写本の存在が知られているが、いまのところ玄奘の漢訳でしか研究できない同書の梵語断片の同定や内容理解の向上に資するところ大である。また、第1章・第2章の『集量論複注』の批判的校訂の作成に携わり、『集量論』第2章の梵語テキスト復元作業を行ってきている、オーストリア科学アカデミーのホルスト・ラシック博士を招聘し、梵語テキスト復元に関する貴重なノウハウを得ることができた。批判的校訂テキストと写本の音写テキストを出版可能な状態にまで整備し、出来るだけ早い時期に、中国蔵学研究中心とオーストリア科学アカデミーが共同で刊行しているシリーズにおいて、4分冊で出版することになっている。(すでに、第1章・第2章は出版されており、第3章も本研究代表者が刊行準備中である。)2014年8月にウィーン大学で開催された国際仏教学会とハイデルベルクで開催された国際ダルマキールティ学会において、本プロジェクトの係わって来た渡辺俊和・志賀浄邦・小野基・狩野恭などの諸氏が、本プロジェクトの研究成果を利用して、研究発表を行った。
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Proceedings of the Fifth International Dharmakirti Conference
巻: なし ページ: 未定
Chen-kuo Lin/Michael Radich (eds.), A Distant Mirror, Articulating Indic Ideas in Sixth and Seventh Century Chinese Buddhism
巻: Hamburg Buddhist Studies 3 ページ: 101-120
インド論理学研究
巻: 第VII号 ページ: 1-30