近年、欧州諸国において多文化主義の限界が指摘されているが、それとともに公教育における宗教の扱い方も変化しているのかを主にイギリスについて調査した。明らかになったのは、多文化主義政策に呼応する従来の異文化理解的宗教教育から、市民性教育的宗教教育へと(少なくとも理念上は)方向転換が起きたことである。日本では異文化理解は市民性教育の一部とみなされる傾向があるが、宗教を教育の対象とした場合、両者は相反する特徴をも示す。欧米の文脈であれば、コミュニタリアンないし公共宗教論的と位置づけうる変化だが、トルコでは同種の教育がイスラム側から必ずしも評価されていないという現状に着目し、その功罪を分析した。
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