研究課題
1. 英文著書『中世イスラームにおける預言者一家の系譜:真正性の番人』(作業の進展に伴い主題と副題を入れ替えることとした)の原稿作成を進めた。4部からなる本論部分の初稿作成は終え、最長部分となる第3部の第二次原稿とその英文校閲も終えた。年度末には、この著書の出版計画について北米の著名研究者と相談を行い、二つの大学出版会に提案書を送るに当たっての推薦の約束を得た。なお、同著書は当初200頁くらいの分量とする計画であったが、作業が進むに従い方針転換を行うのが適当であることが明らかになった。最終的には400頁ほどの頁数の作品となる予定である。2. イランの研究グループからの急な原稿依頼を受け、系譜学者がどのように自分たちの専門家としての権威を主張していたかを如実に示す西暦14世紀末のアラビア語テクスト『偽称者列伝』の校訂テクストを、ペルシア語の序論をつけて発表した。これは当初の研究実施計画に含まれていた仕事ではなく、かつ多大な時間と労力を要したが、研究課題との高い関連性および「現地学界」への研究成果の還元という意義(論文はあるイランの写本学者の功績を称える記念論集に収録された)に鑑み、研究実施計画に変更を加えても引き受けるべきものと判断した。3. 2013年9月にサラエボ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)で開催された国際学会(Association for the Study of Persianate Societiesの大会)において、パネル「ペルシア語圏におけるサイイド・アイデンティティの様々な表出」を共催し、同パネルにおいて「真のサイイドに関する異なる基準:系譜学者と法学者の間の齟齬」と題する口頭発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
アラビア語テクスト『偽称者列伝』校訂テクストの刊行という仕事を中途で加えたことにより、研究の具体的な進め方には変更が必要になった。しかし、これも当初からの研究の目的に適った課題の追加であり、研究は全体としては順調に進展している。
分量に関する方針を転換したことで作業量が増した英文著書『中世イスラームにおける預言者一家の系譜:真正性の番人』の作業進展を優先する。そのため、婚姻の妥当性に関する法学者の議論の展開を対象とする研究に割く時間と労力は限定する。
英文校閲謝金として支出を予定していた助成金の一部が次年度使用額となった。『偽称者列伝』の校訂テクスト刊行作業を年度の途中で行ったことにより校閲の依頼に若干の遅れが出たことと校閲者の一身上の都合によりいつもより校閲に時間がかかっていることとが要因である。英文著書の校閲謝金として使用する。なお、婚姻の妥当性に関する研究成果を国際学会で発表する計画は翌々年度以降に延期する公算が強いので、来年度の助成金は英文著書の完成に向けて必要な支出に中心的に充てることとしたい。
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C. Mayeur-Jaouen and A. Papas (eds.), Family Portraits with Saints: Hagiography, Sanctity, and Family in the Muslim World, Klaus Schwarz Verlag
巻: - ページ: 106-124
R. Ja‘fariyan (ed.), Jashn-namah-i Ustad Sayyid Ahmad Ishkiwari, Tehran: Nashr-i ‘Ilm
巻: - ページ: 959-1004