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2013 年度 実施状況報告書

グローバル化時代の消費行動から見る「イスラム性」構築過程についての動態的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24520065
研究機関東京外国語大学

研究代表者

八木 久美子  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90251561)

キーワードハラール / ハラル / 食 / イスラム
研究概要

平成25年度は昨年度に引き続き、消費行動のなかでも食行動に特化して調査、研究を行なった。イスラムの行為規範に関わる概念である「ハラール」が食に関して使用される際、伝統的な枠組みから大きく離れようとしていることは昨年度の段階ですでに明らかになっていたが、今年度行なったのは、これまでに調査を行ったことのあるエジプトというアラブ中東諸国とはまったく異なる背景を持つ場所として、マレーシアにおける「ハラール」の扱いについての調査である。マレーシアは食のイスラム性を保証するシステム、「ハラール認証」の制度を国レベルで構築していることはよく知られているが、その認証制度が現地の人々の日常生活にどうかかわっているのかが重要なポイントとなった。
結論として言えるのは、エジプトのように人口の圧倒的多数がイスラム教徒である国では、食のイスラム性に関して人々のあいだに疑いというものがそもそも存在せず、なんらかの権威ある機関によって認証される必要性が感じられていないのに対し、マレーシアの場合はイスラム教徒が多数派ではあるが、経済活動の中枢には中華系がおり、店に並ぶ食品がイスラムの規範に適っているか否かは厳密に言えば毎回問わなければならない事項となっているという点である。そのため、国策とは別の次元で、つまりイスラム教徒の国民の日常的な次元において、「ハラール認証」へのニーズが存在していることが確認できた。
実際、首都クアラルンプールの複数の店舗で調査を行ったが、都市部の大規模商店、つまり異なる民族/宗教の人々が混じりあう可能性が高い店舗では、豚や酒など「ハラール性」から外れる食品の売り場はかならず他の売り場と分離されており、このことから一律の基準によって判断される「ハラール認証」がイスラム教徒として生きようとする人々とって重要な意味を持っていることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

食行動は消費行動全体の一部として当初から研究対象とする予定であったが、規範に関しての調査、研究を進めるなかで、食はイスラム法の遵守という次元を超えて、他者との識別記号として大きな意味を持っていることが明らかになった。その結果、「ハラール性」とは別に、ラマダーン月の断食(および共食)についても、イスラム教徒のアイデンティティを(再)構築するうえで大きな意味を持つことが予想され、これについての検討に着手できたことは当初の計画以上の成果である。

今後の研究の推進方策

当初の計画では、衣服に関する消費行動と食に関する消費行動を同じ割合で扱う予定であったが、食に関する調査、研究が予想以上に実りの多いものとなっており、平成26年度も引き続き食に焦点を当てる。
ただし今年度は、食行動のうちラマダーン月の断食という実践に焦点を当て、その実践がイスラム教徒の自己像、とくに「イスラム共同体(ウンマ)」のイメージとどう関連しているかを明らかにしていきたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 「イスラムにおける断食と共食―ラマダーン月の食行動が生み出すもの」2014

    • 著者名/発表者名
      八木久美子
    • 雑誌名

      『東京外国語大学論集』

      巻: 第87号 ページ: p.215-p.234

    • 査読あり
  • [学会発表] 「食が人をつなぐ時―ラマダーン月の断食と共食―」2013

    • 著者名/発表者名
      八木久美子
    • 学会等名
      日本宗教学会
    • 発表場所
      國學院大學
    • 年月日
      20130906-20130908

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公開日: 2015-05-28  

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