研究課題/領域番号 |
24520068
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮崎公立大学 |
研究代表者 |
中別府 温和 宮崎公立大学, 人文学部, 教授 (00155805)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マヤ / カトリシズム / 時間感覚 / 空間感覚 / マヤ・カトリシズム文化複合 |
研究概要 |
本研究は1983年~2012年の期間継続した研究の成果を集大成して、平成25年度および平成26年度に、それぞれ「メキシコ低地マヤ地域における宗教的文化統合の実証的研究」 A Study of Religio-cultural Integration of Lowland Maya Communities in Mexicoとして刊行物で公表することを重要課題としている。 平成24年度は上記の刊行物の内容をより厳密にするために、8月26日~9月22日の期間、宗教的文化統合という仮説的操作概念を使用して、マヤ・ユカテカの一カトリック村落マニの時間および空間感覚を宗教事象の太古性・残存性、世界性、理念性・非合理性という視点から調査分析した。 時間感覚については、①日常の時間と神話的時間、②過去・現在・未来における自己把握および神話的時間における自己把握、③幼子イエスの誕生およびイエスの磔刑の有意味図版に対する自由叙述を聴き取り調査した。空間感覚については、仕事空間、生活空間、宗教空間に関する写真(6枚)を提示し、それらの順序付けとその理由付けを聴き取り調査した。研究実績の概要は次のとおりである。 時間感覚に関しては、神話的時間(イエスの誕生と死、イエスのことの再現としてのミサなど)への反応が日常の時間へのそれと比較して複雑で持続的であること、過去と未来に対して時間幅が広いこと、時間感覚は同一家族のメンバーによって相当度に異なること、を具体的に取りだした。 空間感覚に関しては、中心・四方、神話的事実(神話と儀礼慣習に保持されているマヤの伝統的空間構造)の現実化、祈りとコンパドラスゴが表出する世界性が厳存する事実を提示した。さらにマニの修道会・教会がマヤの伝統とカトリシズムを複合させつつ重要な空間として存続変容してきている実態を修道会・教会の建築空間の象徴性という視点から分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間感覚と空間感覚に関しては、研究目的に相応した結果が得られていることから、本年度も再度調査を継続し、内容をさらに厳密にする。具体的には、時間感覚と空間感覚の様態が個人レベルでどのように異なるかを調べる。従来、時間および空間感覚は集団レベルで論述されてきた。宗教現象を研究するにあたっては、時間・空間感覚が集団レベルで共有されている実態を分析することは不可欠である。しかし同時に、個人レベルで現実にはどのようにそれらの感覚が分有されているかの実態も厳密に分析することが不可欠である。平成25年度は以上の視点から昨年度と同じ研究方法で調査を継続する。その場合、被験者は同一家族・親族に集中させて、個人レベルでの分有の類似と相違の解明を目指したい。この方法をとったとしても、マニ村の一家族平均子ども数は6人であることから、被験者は十分にサンプリングすることができる。 平成24年度は系譜と親族構造と姓を指標とする通婚の様態も学術調査する予定であったが、今回は時間・空間感覚の調査に集中する方が最善であると現地で判断し、これを次回の調査対象とした。具体的には、系譜と親族構造は教会史料を使用して統計的分析を行うが、資料蒐集は終了しているので調査を進捗させる。マヤ姓とヨーロッパ姓を通過儀礼(洗礼、15歳のお祝い、堅信、婚姻)での擬制的親子関係(パドリーノ・マドリーナおよびコンパドラスゴ)関連史料において追跡することによって、マニ村におけるマヤとヨーロッパの人的接触およびその後の階層化の一面が解明できると考えている。この課題を具体的にかつ厳密に解明した研究はまだない。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり、本研究の重要課題は1983年~2012年の期間継続した研究の成果を集大成して、平成25年度および平成26年度に、それぞれ「メキシコ低地マヤ地域における宗教的文化統合の実証的研究」 A Study of Religio-cultural Integration of Lowland Maya Communities in Mexicoとして刊行物で公表することを重要課題としている。と同時に、それらの内容をデータ・アーカイブに開示することである。 データ・アーカイブによる開示の準備には平成24年度に着手し順調に作業は進捗している。情報提供者(加藤 厚 教授)と連絡を取り合い、調査結果公表の環境づくりを行っているので、今年度および次年度は引き続きこの作業を行う。この事項に関する経費としては、この作業への協力者への謝金を1日8,000円×4日=32,000円として予算化した。 平成25年度は約一ヶ月の現地調査を実施し、平成24年度に実施した調査結果および従来の調査結果を合わせた全体のレヴューを行う。このレヴューに関連する調査に必要な謝金として10万円を計上する。レヴューの結果を踏まえ、1983年から2012年までの調査成果全体を「メキシコ低地マヤ地域における宗教的文化統合の実証的研究」として集約し、刊行物の形で公表するとともに、データ・アーカイブに開示する。 刊行物の体裁の概要は次のとおりである。①報告書(モノクロ)、②表紙 レザック66170k、③本文 上質紙 35K、④16ページ×12版 192ページ モノクロ
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度は約一ヶ月の現地調査を実施し、平成24年度および25年度に実施した調査結果および従来の調査結果を合わせた全体のレヴューを行う。このレヴューに関連する調査に必要な謝金として10万円を計上する。レヴューの結果を踏まえ、1983年から2012年までの調査成果全体をA Study of Religio-cultural Integration of Lowland Maya Communities in Mexico として集約し、刊行物の形で公表するとともに、データ・アーカイブに開示する。 データ・アーカイブに関する経費としては、この作業への協力者への謝金を1日8,000円×4日=32,000円として予算化する。 刊行物の体裁の概要は次のとおりである①報告書(カラー+モノクロ)、②表紙 レザック66 170k、③カラーページ コート 62.5k、④本文 上質紙 35K、⑤16ページ×12版 192ページ モノクロ
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