平成26年度は、8月9日(土)~9月13日(土)の期間、メキシコ・ユカタン州の一カトリック村落マニ(Mani)において、次の学術調査を行った。 (1)質問紙と有意味図版(計6枚)を使用して、宗教事象の太古性、世界性、理念性、内調整(adjustment)という視点から時間・空間に関するデータを個別聴取調査により収集し、個人の断面で分析した。時間感覚・空間感覚についてそれぞれ20事例を収集した。 (2)時間・空間に関する昨年度までの調査のレヴューを個人の断面で行った。主な分析結果は次のとおりである。 時間感覚については、マニのカトリックは自己把握、太古の神話的事実の現実化、「小さな時間(この世の日常的な時間)」における「大きな時間(キリストの誕生および死ならびにこの世の始まりと終わりなどを含む時間)」の再現(representation)と再統合(reintegration)などの場面で宗教的な理念や教えによる内調整(inner adjustment)を行っている。また、「聖母マリアと幼子イエス」と「イエスの磔刑」の写真への反応は、宗教事象に関するきわめて古い知識と意味が、何千年という巨大時間のなかで持続させられ、マニのカトリックの内面に深く定着し、人々の暮らしの全面にさまざまな意味を与え続けている。 空間感覚に関しては、マニでは空間が神聖な存在に関係する理念に結びつけられて立て直され(adjust)、太古のことばや象徴によって中心と外周というような濃淡をともなった価値づけがなされる。教会での学び/学校での学び、教会/家庭祭壇、ミルパ/パルセーラと対比すると前者の価値づけが後者のそれを上回り、後者は「俗世間」であり「精神的な意味で見るべきものは何もない」と語られる。また、場所や土地は開かれたところとして意味づけされ、私有よりも共有、所有権よりも使用権という意味づけが強まる。
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