「他者の困難な生にいかに向き合うか」という「共生」の問題への取り組みの事例として、知的障害者とアシスタントが共に暮らす〈ラルシュ〉共同体運動を取り上げ、その思想・実践的可能性の考察を、特に市場経済批判としての意義に注目しながら、次の三つの領域で行った:(1)〈ラルシュ〉共同体運動の基本思想の研究;(2)日本・カナダ・フランスの〈ラルシュ〉共同体の現地調査;(3)「市場経済」批判の研究。その結果、市場経済の問題は現場では「格差社会における強者と弱者の和解」という主題として現れ、〈ラルシュ〉共同体運動が「平和運動」として展開しつつある経緯が明らかになり、その意義の研究という課題が見出された。
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