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2012 年度 実施状況報告書

古代キリスト教思想におけるフィランスロピア概念の受容史

研究課題

研究課題/領域番号 24520072
研究種目

基盤研究(C)

研究機関関西学院大学

研究代表者

土井 健司  関西学院大学, 神学部, 教授 (70242998)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードフィランスロピア / 使徒教父 / 弁証家
研究概要

平成24年度は、2世紀の使徒教父ならびに弁証家におけるフィランスロピア論を考察した。まず予定通りそれぞれの著作におけるフィランスロピアの全用例を調べ上げ、一つひとつテクストを考察し、その意味を解明していった。本研究の背景には、4世紀カッパドキア教父の救貧思想の解明があり、とくに救貧問題とフィランスロピアの関連について注意しつつ用法を研究した。その結果、使徒教父にも弁証家においてもフィランスロピアと救貧の関連を確実に示すテクストは一例も存在しないことを突き止めた。また彼らにおけるフィランスロピア概念の使用は積極的なものではなく、むしろ弁証という動機から、読み手の好意を得、その理解を得るために使われていると結論した。つまりキリスト教固有の概念としての使用例はないということである。2世紀のキリスト教著作家にとってこの概念はキリスト教固有の思想を表現するものではなく、むしろ弁証を目的とした外向きの言葉であったということである。なお、これについては一編の論文を公刊することができた。
さらに研究計画段階では曖昧であった2世紀の外典、偽典文学についても用例を調査し、そこでの用例が弁証的な意図に属するものではないが、決して救貧との関連で使用されているものではないこと、さらにキリスト教固有の使用例は見当たらないことも突き止めた。ただこの研究成果については公刊するに至らず、現在準備中である。
なお予定ではアレクサンドリアのクレメンスにおけるフィランスロピア論を研究することになっており、そのためすでに用例をすべてリストアップし、少し考察を加えているが、用例全体を考察するにはいたらず、この課題の完成は次年度に持ち越すこととなっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画では24年度中に完成させる予定になっていたアレクサンドリアのクレメンスにおけるフィランスロピア論の研究が完成に至らないが、すでにその全用例のリストアップを済ませ、四分の一程度はテクスト考察を行っている。また使徒教父、弁証家については考察を完了し、テーゼを立て、論文を執筆して公刊した。
さらに研究計画段階では明示していなかった外典、偽典文書におけるフィランスロピア論を別途考察し、論文の執筆・公刊にむけて準備中である。

今後の研究の推進方策

まずはアレクサンドリアのクレメンスにおけるフィランスロピア論の研究の完成を目指したい。その後、オリゲネスの著作を考察したい。なおグレゴリオス・タウマトゥルゴスの研究は着手するにとどめておきたい。
また研究方法として、フィランスロピア概念の使用における主語と目的語とその内実の三点に考察のポイントを絞ってきたが、もう一つのポイントとして、この概念と併置される形容語についても考察・研究の必要を感じている。たとえば「フィランスロピアで柔和な神」などといった事例である。これまではバラバラとなっている可能性が高いと考え、その必要を感じなかったが、様ざまなテクストを読んでいくうえでその必要性を感じているので、方法論を含めて検討したい。

次年度の研究費の使用計画

昨年度購入予定のすべての図書を購入するに至らなかったため使用しなかった費用を含め、研究費の使用は次のように考えている。古代キリスト教関係、西洋古典関係、および貧困問題関係の図書資料、その代替としての資料複写、さらに資料収集のための旅費、また用例チェックと資料整理のためのアルバイト謝金の支出、以上を予定したい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 使徒教父と弁証家におけるフィランスロピアの用法と救貧思想2013

    • 著者名/発表者名
      土井健司
    • 雑誌名

      神学研究

      巻: 60号 ページ: 41-54

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公開日: 2014-07-24  

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