研究課題/領域番号 |
24520072
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
土井 健司 関西学院大学, 神学部, 教授 (70242998)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フィランスロピア / アレクサンドリアのクレメンス / キュプリアヌスの疫病 / 救貧 / 受肉論 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度より引き継いでいるアレクサンドリアのクレメンスのフィランスロピア論を論文化し、さらに3世紀中ごろの「キュプリアヌスの疫病」にみられるフィラデルフィア論をトゥキュディデースの描くアテナイの疫病の記事と比較することでその特徴を浮き彫りにし、その結果を4世紀初頭のパレスチナの疫病におけるフィランスロピア論に当てはめて解釈した論文を執筆した。クレメンスのフィランスロピア論においてはじめてフィランスロピア概念がキリスト教思想として展開し、受肉や救貧をフィランスロピアとして捉える思想を確認した。また疫病論では、フィランスロピアの具体的な有り様が、病者から「避けて遠ざかること」とは反対に、病者に「近づき接触すること」において捉えられていることを確認した。 本研究は本研究に先立つ課題「カッパドキア教父における救貧の思想と実践」につながる研究であって、カッパドキア教父の救貧思想の前史として研究を遂行してきたのだが、以上によってカッパドキア教父の救貧の思想と実践の前提となる要素がすべて確認されたものと判断した。そこで、カッパドキア教父の救貧思想の研究と合わせて、全体として一つの研究書を執筆することができた。 キリスト教においてフィランスロピアは二世紀では未だ積極的には使用されず、外向きの言葉に止まっていたが、クレメンスにおいて本格的なキリスト教的フィランスロピア論が展開し、その具体的性格は疫病論のなかで(身体的・精神的)接近と接触として捉えられていること、以上が本研究の結論となる。これにカッパドキア教父のフィランスロピア論がつながっていくのである。 ただし一点偽クレメンス文書におけるフィランスロピア論の研究が欠けていることを自覚したため、これを課題として補助事業期間を一年延長することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究の一部を除いても、一通り納得の行くところまで研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
延長した一年において、偽クレメンス文書におけるフィランスロピア論の研究を実施し、本論にどのようにつながるのかを探求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に予定していた研究を一部実施する必要がなくなったため、予定額より使用額が下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
関連する新たな研究課題がひとつ出てきたので、これを遂行するため図書費を中心に適宜必要なものに使用していきたい。
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