研究の開始当初は『勅修百丈清規』に記載される唱衣法を主たる対象としてきたが、現存最古の清規である『禅苑清規』から『勅修百丈清規』までに成立した禅宗諸清規に対象を広げ、それら諸清規に記載される葬送儀礼及び唱衣法について文献学的観点から確認を行ってきた。 上記のような中国において成立した清規類に記載された唱衣法の研究を土台として、平成27年度には、中世期日本にて成立した諸清規における葬送・唱衣法の記述を確認した。日本中世期の禅宗清規においては確かに唱衣法の記述はあるものの、葬送における実施の位置づけの記載や唱衣念誦・廻向の記載に留まるなど、唱衣に関する記載は類型的であることが分かった。一方、中世期の日本曹洞宗の著名な禅師たちの葬送の記録である『喪記集』には、遺品の分配や唱衣による利益金など、かなり詳細な唱衣に関する記述があった。 中世期の日本曹洞宗の著名な禅師たちの葬送の記録―『喪記集』―に記された葬送と唱衣法につき確認を取るとともに分析し、平成27年9月には、科学研究費・基盤研究(A)「多分野複合の視角から見た日本仏教の国際的研究」(研究代表者 大久保良峻・早稲田大学教授)2015年度第1回研究集会において、「日本成立の諸清規・清規関連文献における唱衣法について」と題する発表を行った。この他には、ドイツのエアフルト大学にて開催された、第二一回国際宗教学宗教史会議世界大会(IAHR World Congress)にて、“The Robe-Selling Ritual in the Context of Chan Funeral Rites”と題した発表を行った。また、日本宗教学会第74回学術大会パネル『東洋の宗教思想と井筒俊彦の哲学的思惟』において「井筒俊彦における禅解釈とその枠組み」と題した発表を行った。
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