研究課題/領域番号 |
24520077
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 章則 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10187990)
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キーワード | 狂歌 / 近世後期 / 地域 / 文化 / 連 / 摺物 |
研究概要 |
本研究は、「狂歌」に関わる人々が江戸期の地域文化の形成に果たした役割を多角的に検証するものであり、狂歌人に代表される広義の「学問者」の「知」の構造を思想史的に考察することを目的とする。 「狂歌」を特筆するのは、①19世紀に享受層を拡大させた「狂歌」が歌学関連書のみならず儒書や和漢の歴史書・地理書などの知見をフル活用できる幅広い教養の上に立って作成されていたからであり、②「連」と呼ばれる全国的なネットワークを通じて狂歌人は地域に多様な人的・物的資源をもたらしており、「狂歌」の地域文化形成への貢献度が高いからである。さらには近代の地域文化の土壌を用意したとすら見える。 こうした「狂歌」や狂歌人の地域における役割への検証から導出される知見・文化情報は、江戸期に展開した地域文化の再評価のみならず、現今の地域社会再編成の潮流に文化面での視座を提供するものである。 研究の第2年度である平成25年度は、本研究の今後の調査の指針を得ることが可能な地域を選択し調査に赴くとともに海外を含む「狂歌」関連資料の調査、必要な基礎文献の整備に努めることに主眼を置いた。具体的には、(1)新潟県上越市直江津地区、山形県天童市を重点地区に定め調査を行った。(2)イタリア・ベネチア市、オーストリア・ウィーン市、オランダ・ライデン市に赴き、日本関係資料を閲覧し、狂歌関連資料を確認した。また、福岡市九州大学における文献調査を行った。(3)諸種の「狂歌本」の原本・複写本を入手し、嘉永・安政期における「連」の再編成の問題を整理し論文を作成し発表した。本年度は、研究目的・研究実施計画に則った研究を実現したと言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画に沿った調査を国内・国外で行い、事前に保持した資料と新入手の資料を活用した論文を発表することができた。また、調査への協力者を多数確保できた。これらのことから、本年度の研究は順調な達成をみたと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、24・25年度と同様に、史料調査を中心に検討作業を継続的に実施するが、前掲の調査先を足がかりとして調査の対象をさらに拡大したい。 その地域として設定するのは、山形県山形市周辺地域と群馬県館林市周辺地域とである。同地域は江戸時代後半に秋元藩が存在した地域であり、狂歌作者を多数輩出した地域である。同地域の調査により、地域文化の展開の実際を狂歌に即して検証可能であると考える。 文献資料の調査先としては、九州大学附属図書館富田文庫を引き続き設定する。 なお、基礎史料となる「書物」をめぐる方法的・素材的な情報を入手する機会として、諸種の研究会・史料調査会を活用する。諸領域の研究者による「書物・出版」と社会変容研究会では情報の提供・入手のため研究発表を行う。また、海外調査先としては、イタリア・ヴェネチア大学を設定し、調査を行うとともに研究成果の紹介を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
他の業務に伴う海外出張により旅費が支払われ、本研究が予定していた旅費の支出が大幅に減額されたことと、購入を予定していた機器の製造が遅れ、支出できなかったため。 本年度に予定する海外調査出張の箇所に追加調査地・報告地(フランス・パリ、ベルギー・ブリュッセル)を設定する。また、購入が遅れていた機器(新規機種)を発注し、それらに前年度の支出額の残高を充当する。
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