本研究は、中世文化における周縁テキスト(神道書、通俗仏書、兵法書、医書、占法書等)=雑書の文化史的・思想史的意義を総合的に研究しようとするもので、平成26年度も、平成25年度に引き続いて、「雑書」の調査・収集を行った。調査したのは、西福寺(京都府井出町)、安住院(岡山市)、京都大学総合博物館(京都市)、県立金沢文庫(横浜市)、覚城院(三豊市)、富士市博物館(富士市)であった。西福寺では前年度に引き続き、神道関係資料及び道具類の調査・撮影を行った。安住院・覚城院では通俗仏書・密教書、京大総合博物館では勧修寺聖教、金沢文庫では称名寺伝来の密教医学書、富士市博では六所家旧蔵の立川流聖教の調査を行った。 以上の調査によって得られた成果を利用し、発表「密教的性愛思想の中世神道説への影響」(EAJS〔ヨーロッパ日本学協会〕リュブリアナ大会〔スロヴェニア〕パネル発表「宗教表象における身体―声・儀礼・造形」2014年8月29日)、「西福寺の神道灌頂」(仏教文学会2014年度12月例会シンポジウム「南山城と神道灌頂―井手町西福寺所蔵資料をめぐって」2014年12月14日)を行い、論文・資料報告として「真福寺蔵『生死本源経』書誌と翻刻」(EAJSリュブリアナ大会パネル資料『宗教身体テキスト資料集』2014年8月)、「中世の天照信仰―特にその太陽神イメージの変容をめぐって」(鈴木健一編『天空の文学史―太陽・月・星』三弥井書店、2014年10月)、「中世神道―空海入定後の両部神道」(『歴史読本』60-2、2014年12月)、「『御口決集』―解題と翻刻」(『六所家総合調査報告書 聖教』富士市教育委員会、2015年3月)を執筆した。
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