本研究は、近世日本と東アジア諸国における人を神として祭る行為を、当時規範意識の基盤となっていた儒教思想と、各国の自国意識との関連で捉え、日本の人神祭祀と宗教史に対する通説的理解を見直したものである。人神祭祀に即して、従来神道か仏教かという文脈で論じられてきた前近代の日本の宗教史に儒教祭祀という視点を加味する必要があることと、明治維新期の宗教政策は祭祀の儒教化として把握できること、前近代の日本の宗教史は国という枠組みを超え圏として把握せねばならないことを指摘した。また、近世日本を理解するためには、同時期に皇帝(天皇)と覇王(将軍)という二元的な政体を有した越南との比較が有効であることを示した。
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