精神分析と左翼思想(マルクス主義思想)はなぜ持続的協調に到達できなかったのかという問いについて、文献と歴史的資料の調査にもとづき、実証的かつ総合的に検証した。1920年代から今日まで、精神分析と左翼思想は何度か接近し、そのつどいわばすれ違ってきた。その歴史を、1920年代から30年代にかけてのドイツ(ベルリン)、および1960年代から70年代にかけてのフランス(とりわけ、1964年に国際組織からの離脱を余儀なくされたラカン派)に焦点を絞り、再構築するとともに、精神分析の医学化の推進を、事実上、左翼思想にたいする防波堤として機能させた米国精神分析の特異なケースを、その歴史的帰結とともに検証した。
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