研究課題/領域番号 |
24520088
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高橋 文博 岡山大学, 社会文化科学研究科, 研究員 (70116474)
|
キーワード | 西村茂樹 / 西洋書翻訳 / 原書調査 / 翻刻 / 近代日本思想 |
研究概要 |
平成25年度は、西村茂樹の手書き文書のWordへの電子データ化作業を本格的に実施でき、Wordへの電子化は非常に順調に進んだが、問題点としては、国立国会図書館の方針により、国立国会図書館がデジタル化している原資料の閲覧不可能であったため、原資料において、かすれたり、裏面が写るなど、判読不可能な箇所について、原資料について直接確認することができなかったことである。Wordへの電子データ化を目指した38の資料について、公開に値する程度に翻刻できたものは37件であり、現時点では、翻刻の第一次点検を終えているので、平成26年度には、最終点検を経て、PDFとしてweb上に公開するとともに、紙媒体冊子としても公表する予定である。西村による翻訳の原書・原著者の確認できないでいる5件は、西村の付した書名のみで手がかりのまったくない状態であるが、今年度も、探索を続ける予定である。西村の翻訳を試みた原書・原著書の確認により、西村の洋学研究の広がりを明らかにできたこと、また、原書について翻訳した箇所と翻訳を省いた箇所を確認することで、西村における翻訳の態度、ひいては、彼の思想のあり方も明らかになりつつあり、また、西村にみられる西洋近代思想の受容のあり方が、近代日本思想の性格を明らかにしていることも明確になりつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手書き文書を翻刻してWordに電子化する作業は、アルバイトの筆耕、及び民間業者に委託することで、本年度に予定した通りに、実現できた。翻刻の出来としても、原資料の状態が必ずしも良好といえないものもあるという条件のもとでは、おおむね満足すべきものであった。 本来、予定以上の成果といってもよいかもしれないのであるが、そう評価しえないのは、資料の分量が予想外に多かったことによる。翻刻できた分量はWordによる文字量計算では、700,000字を優に越えており、これは、A4サイズ1頁とすると優に700頁を越えることになる。このことが、西村翻訳の内容に即しての意義の分析について制約することになっている。また、重要と思われる資料の原書を確認できないことにも、手がかりが著しく乏しいとはいえ、不十分さを感ずる。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、西村翻訳のWord化について、ほぼ第一次点検を終えているので、公表のための最終点検を行い、公表にふさわしい形態に整える。 次に、西村翻訳の原書の未確認のものの調査を継続する。 その上で、本年度のもっとも重要な研究課題は、西村による西洋書翻訳のあり方の考察である。つまり、西村が、翻訳した文献の内容とその傾向、また、翻訳原書のどの部分を重視したのかなどを考察し、西村の思想的意義を明らかにすることである。このことと関連して、近代日本の思想の性格を見通したいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用するため。 本年度は最終年度であるので、次のことを実行する。第一に、最終的に公表し得る形態に電子データを整理した上で、翻訳原書との関係における西村翻訳のあり方を分析すること、第二に、翻訳原書の性格及び、西村翻訳の思想史的意義を分析すること、そして、第三に、web及び電子データとして公表することである。 補助金の使途としては、第一に、データ化された西村翻訳を、既に電子データとして入手している西村翻訳の原書及び関連文献と対比して分析するための文献資料購入の経費、第二にこれらの資料をプリントして製本する経費、及び、電子データ化された西村翻訳を、西村翻訳の意義にかんする研究の成果とともに、少部数製本するとともにCDに焼き付けて研究者に公表するための経費にあてる。、、
|